保健学科研究紹介2023
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―24―樋口 由美子 講師平 千明 助教信州大学大学院医学研究科博士課程修了。信州大学医学部附属病院臨床検査部及び先端細胞治療センターを経て、2015年4月から信州大学医学部保健学科。信州大学医学部保健学科卒業。同大学院修士課程・博士課程修了(博士・医学)。信州大学医学部附属病院で臨床検査技師として勤務し、2016年に信州大学医学部保健学科に着任。 体内には、病原微生物やウイルスなど外界の異物から自分を守る「免疫」という仕組みが備わっています。免疫には、様々な細胞が相互にバランスをとって関わっていますが、そのバランスが崩れると、感染症、アレルギー疾患、がんの発生とその進展につながります。 当研究室は、このような疾患の新規バイオマーカーを探索したり、疾患の発症機序を免疫学的側面から解明する研究を行い、臨床検査や治療に貢献することを目指しています。現在は、フィブリノゲンが翻訳後修飾されたシトルリン化フィブリノゲン蛋白の炎症における役割について研究しています。また、他の研究室と共同で、赤芽球癆、好酸球性胃腸炎の研究にも携わっています。 医療における遺伝子解析技術は、近年目覚ましい発展を遂げています。特に、網羅的解析の普及によりバイオマーカーとして有用性の高い疾患関連遺伝子が多数報告されていますが、臨床検査として応用するためには解析コストが非常に高く、日常検査への普及にはまだまだ時間を要するのが現状です。 そこで、私たちは、循環器疾患に関連する遺伝子多型やmicroRNAを探索し、臨床検体や培養細胞を用いてその有用性を検証するとともに、高い感度と特異性を有する簡便な検査法の開発や改良を行っています。また、月経随伴症状関連遺伝子検出と自律神経活動測定を通して月経痛緩和のためのセルフケアへの応用も模索しています。クリーンベンチ内での培養細胞操作タンパク質の実験大学院学位論文審査会遺伝子多型解析プライマーをオリジナルに設計し、複数の遺伝子多型の同時検出系をSNaPShot法を用いて構築MicroRNAの解析心房細動で生じる心房リモデリングに関連したmicroRNAの変動について、遺伝子の増幅過程をリアルタイムに可視・定量化するPCR装置を用いて解析蛍光顕微鏡を用いた培養細胞の観察大学院生の国際学会発表大学院修士課程の院生と国際学会でのポスター発表研究から広がる未来 生体分子が病態によって姿を変化させるのには何か意味がある? 何のために? その役割は? どうしたらその疑問を解決できる?ワクワクしながら、時には苦労しながら追求する。その過程を通して得た経験と知識は一生の宝物です。科学的視野に立って物事を考え、技術を使って問題解決ができるClinical Laboratory Scientistは、臨床検査分野のみならず、様々な分野で医学に貢献できます。卒業後の未来像 細胞培養やフローサイトメトリー等の細胞解析法、ELISAや電気泳動等のタンパク質解析法、遺伝子学的な実験手法を学び実践します。これらの技術の習得により、病院の臨床検査、細胞治療、企業での研究など様々な分野で活躍できる人材を育成します。研究から広がる未来 私たちは、臨床の現場ですぐに役立つような遺伝子検査法の開発を目的として研究しています。この遺伝子検査を、心電図検査・超音波検査・呼吸機能検査などの生理機能検査と組み合わせて、新規の疾患鑑別法や治療法を構築することで、将来的にゴールドスタンダード(標準法)として、国内外で応用される可能性が広がります。卒業後の未来像 遺伝子解析技術は、医療において必要不可欠のツールとなっています。ゲノムを扱う上での技術と倫理観を習得することで、臨床検査技師として病院への就職だけでなく、企業や科学捜査研究所(科捜研)で働く道も拓けます。病因・病態検査学病因・病態検査学検査技術科学専攻免疫学的側面から疾患の現象を捉える検査技術科学専攻ゲノムを臨床検査へ…簡便な遺伝子検査の開発と改良

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