経法学部研究紹介2023
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研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例7「政策企画実習」では、農業政策など特定の政策分野において、受講生が実際に政策を考えて予算要求案を作成した上で、財務省に赴き、それを実際に各府省の予算を審査(査定)している主計局主査に査定してもらうという模擬体験を行っています。また、大学と高校の連携の一環として、政策コンテストを行い、受講生が自分たちの提言を高校生にも分かりやすく伝えるといったことも行っています。左: センサーネットワークグラフP上のN個のターゲットによる カウント関数h【N=5】 右:オイラー積分によりターゲットの総数を与える式左:松本市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図右:長野市のバス停留所位置データから得られるパーシステント図 組合せ論的に構成される空間(図形)の不変量の導入(オイラー標数、LSカテゴリー、Topological complexityなど)と、それらの工学、データ解析へ応用。特に、センサーネットワークやロボットモーション設計、パーシステントホモロジーを用いた位相的データ解析。 図形の概形を数学的に調べる位相幾何学とその応用を研究しています。穴が開いていたり、分割されたり、同じものが積み重なっていたりする図形の性質をどう特徴づけるかが大きなテーマです。特に図形の複雑さを数値化して、分類することに興味を持っています。 そのような古典的な不変量として、オイラー標数が知られています。これは図形の頂点の個数から辺の本数を引いてさらに面の個数を足して定義される素朴な値です。正多面体が何種類あるかの分類などに古くから使われてきました。最近の応用として、オイラー標数に関する積分によって、センサーを備えた領域上に散らばる人や物の総数を数え上げる手法が確立されました。この他にも様々な実学的応用も考えています。田中 康平 准教授2005年信州大学理学部卒業後、高校教員を経て、2013年信州大学大学院総合工学系研究科博士課程を修了。同年より信州大学経済学部に着任。現在に至る。専攻は代数的位相幾何学および応用トポロジー。 地方財政や地方創生(地域経済の活性化)などについて研究しています。近年の少子高齢化の進展や、東京圏への人口の一極集中により、地方の経済・社会は大変厳しい状況となっています。今後、人口が更に減少し、社会の超高齢化が進んでいくことは不可避ですが、そうした中にあっても地方の経済・社会の活力を維持していくことは、今後の我が国の最重要課題と言っても過言ではありません。また、こうした課題の対応の主体となるのは、県や市町村などの地方自治体であり、その財政の健全性なども重要な課題となります。担当教員は、大蔵省(財務省)のほか、内閣官房・内閣府、総務省、地方自治体などで30数年にわたる行政経験があり、それも活かして以上のような諸課題の解決策等について考えていきます。■ 庄市 教授1987年東京大学法学部を卒業し、大蔵省(現・財務省)に入省。財務省中国財務局長(2017年~)、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局次長(2018年~)、財務省北陸財務局長(2020年~)を経た後、2021年から信州大学に出向。 従来の位相幾何学は、目に見えない、描くこともできない複雑で高次な図形を特徴づけるために、抽象的な議論が主体になっていました。近年になって、この位相幾何学が、工学やデータ解析に利用できることに研究者たちが気づき、「応用位相幾何学(Applied Topology)」という新しい分野が急速に発展しています。 上記でも述べたセンサーネットワーク理論はもちろんのこと、現在最も着目されているのは、データ解析への応用かもしれません。膨大な点の位置情報が与えられたとき、その配置を位相幾何学を通しておおよその形状で分類する方法です。このとき重要な道具が「パーシステントホモロジー」と呼ばれる点配置に現れる「穴」の情報を拾い上げたものです。現在までにタンパク質の構造解析やガラスなどのソフトマター構造の特徴付に貢献してきました。 現在の情報社会で、データ解析は企業にとっても重要であることは言うまでもありません。新たな手法を自ら開発し、それを自在に使いこなせる人材が期待されます。 新型コロナ感染症の影響により、テレワークの普及が進んだほか、地方移住への関心が高まっており、東京圏への人口の一極集中の流れに変化の兆しが見られます。感染症は、日本経済に深刻な打撃を与えていますが、地方創生に関して言えば、「ピンチをチャンスに変える」発想が必要と言えます。また、政府においては、DX(デジタル・トランスフォーメーション)により地方の社会課題を解決していくべく、「デジタル田園都市国家構想」関連の諸施策を推進しています。このような地方創生等に係る最新の動きを引き続き十分に把握しつつ、今後取り組むべき方策等について考えていきます。 教育では、財務省の協力を得て、政策の企画立案や予算要求を模擬体験する実習(「政策企画実習」)も行っています。受講生は、実現可能性のある政策を考え、相手を説得するといった能力を培うことができます。 地方財政や地方創生について学ぶことは、地方公務員などに限らず、どのような分野に進むにしても、地域社会で生きていく上で有用な知識となると考えています。応用経済学科応用経済学科図形の「形」の複雑さを数値化し、身近な問題へ応用する行政の最前線での経験を踏まえ、地方財政や地方創生について考えていきます

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