従来の原価計算生産プロセスブラックボックスインプット原材料2,000円(100㎏)800円加工費MFCAインプット原材料2,000円(100㎏)加工費800円廃棄物560円(20㎏)生産プロセスアウトプット製品1個2,800円(80㎏)アウトプット製品1個2,240円(80㎏)研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例6フランス、エコール・ポリテクニークでの研究発表〇 交渉実験:被験者は3人1グループとなり、チームの形成と、そのチームでの成果の分け方を交渉する。3人チームを形成するグループと、2人チームが形成されるもしくは全員がバラバラになるグループとの違いについて、様々な角度から公平な分け方とは何かを追究する。〇 招待ゲーム実験:チームに所属するか否かを被験者が回答するとき、同時に回答する場合と順番に回答する場合で、どちらがより良い結果を導くかを調査する。上:従来の原価計算手法による原価把握下:MFCAによる原価把握・農業における管理会計手法の適用・ 農福連携施設における障がい者に向けた管理会計手法を活用した目標管理手法の研究・MFCAを活用したSDGs経営の推進 世の中には、独力ではなく、チームを作り、他者と協力する方が大きな成果を上げられることがたくさんあります。しかし、チームの形成や維持には、チームに属する人たちが満足できる「公平さ」が必要です。「公平」と一口に言っても、その意味は状況によって異なります。例えば全員がチームに同じだけの貢献をしているとしましょう。この時、成果を全員に同じだけ分け与えても不満を抱く人はいないでしょう。一方、人によってチームへの貢献が異なる時に成果を均等に分けると、貢献の大きい人は不満を持つことが想像できます。私の研究では、チームを形成、維持するために必要な「公平な」成果の分け方を追究しています。篠田 太郎 助教2017年3月に早稲田大学大学院経済学研究科修士課程を修了。2020年4月より同大学政治経済学術院助手を経て、2022年9月より信州大学社会基盤研究所の助教に着任。専門は実験経済学とゲーム理論。趣味は中学生の頃から続けているチェス。 出会いはファーストインプレッションが大切と言われますが、企業との出会いはそれではちょっと危険かもしれません。会計は企業と企業外部の様々な利害関係者のコミュニケーションを促進するツールであり、会計情報を分析することで真の企業実態を把握することができるようになります。さらに、企業の実態に迫るために、経営者や社員等にインタビューしたり、管理会計手法を適用することで、よりよい経営の実現をサポートすることもできます。また、環境問題への取組みとして環境管理会計手法を活用した企業の環境負荷低減についての研究を進めています。 関 利恵子 教授明治大学商学部卒業後、2000年明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得修了、同年10月 信州大学経済学部着任。講師、准教授を経て2023年より教授。2009年博士(経営学)。専門は経営分析・管理会計。 上述したチームの形成と分け方の問題は「協力ゲーム理論」という分野の分析対象です。上の例では個人がチームを作っていましたが、協力ゲーム理論が分析対象とする状況は幅広く、必ずしも個人にとどまらず企業や国がチームを作る場合もあります。チーム内の全員が納得できる分け方は、ありとあらゆる場面で重要な問題です。実験経済学は、経済学の中では比較的新しい方の分野ですが、協力ゲーム理論を扱う実験はその中でも特に新しく、明らかになっていないことがまだまだたくさんあります。 「全員が納得できる」ことの重要性は、近年ますます高まっています。それを追究することは、弱者やマイノリティを無視するのではなく、手を取り合って進む「多様性」にも通じるところがありますし、短期的な繁栄ではなく継続的な豊かさを求める「持続可能性」にも通じます。協力ゲーム理論に触れる中で「公平さ」とは何かについて考え、様々な立場からの見え方を捉えられるようになって欲しいと思っています。 会計が果たす役割は、近年益々重要なものとなってきています。農業、環境問題、SDGsなど一見すると会計とは無関係と思われる分野にも密接に関わってきています。これまで私は県内中小企業にコスト削減と環境負荷低減を同時に可能とする環境管理会計手法のMFCA(=マテリアルフローコスト会計)の導入支援に携わり、手法がもたらす組織への効果・影響を研究してきました。MFCAは従来の原価計算とは異なり、工程内の原材料の実際の流れを投入物質ごとに金額と物量で把握し、製品も廃棄物も一つの製品とみたて、廃棄物の配送・処理コストもコストとして把握する手法です。この手法のコストダウン効果は省資源・省エネに通ずるものとして注目されてきました。またこれまで管理会計がなじまないとされた農業経営でも導入研究が進められています。 このように管理会計・財務会計はあらゆる業種、職業と密接に関わっており、社会人として必須のツールでもあります。したがって、卒業後の進路に関わることなく会計の学びは様々な活動で活かされると思います。応用経済学科応用経済学科協力の形成、維持に必要な「公平さ」を探すイメージに左右されない真の企業実態把握と活力ある組織の仕組みづくりに挑戦!
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