研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例主な研究事例23法律学基礎演習の授業風景。特別受益・寄与分を含む相続分の事例問題を検討しています諏訪の末子相続と北信濃の均分相続河合空と小林一茶の場合(信州大学法学論集27号115-178頁、2016年、共著)Lawrence v Gallagher[2012]EWCA Civ 394シビルパートナーシップ解消に伴う財産の分配(信州大学法学論集25号71-81頁、2015年)内縁関係の解消と居住用不動産の利用(2)死亡解消における非名義当事者の保護を中心に(信州大学法学論集21号127-146頁、2013年)ハーグ(オランダ)に所在する国際刑事裁判所(ICC)のエントランス。ジェノサイドをはじめとする国際法上の重大犯罪の訴追・処罰を任務とする。 組織的に行われる特殊詐欺等に際しては、犯罪収益が行為者の手元に残らないよう徹底的にはく奪することが求められる一方、被害者をいかなる範囲で救済するかも問題となる。最近では、行為者が被害者に被害弁償を行った場合に、被害弁償額を追徴額から控除すべきかが争われた事案等が登場しているため、没収・追徴と被害弁償の関係を論じた論稿を公刊した。拙稿「被害者ある犯罪における没収・追徴」刑事法ジャーナル74号(2022年)27頁以下。 市民の生活関係を司る法律「民法」の中に「親族」「相続」という編があり、これらは一般に「家族法」と呼ばれています。人は生まれて暫くは親に扶養され、成長してパートナーと共同生活し、子を扶養し、その間に家族が亡くなると遺産を受け継ぎ、最後は自分が遺産を残して家族と別れを告げます。かようなあらゆる場面について、成立・効果を定めた法規範が家族法です。家族法は、(「法律は家庭に入らず」の言葉通り)家族が円満に生活する限りは前面に現れることはありませんが、互いの話し合いだけでは解決できない問題が発生したときにそれを解決するツールの一つとして機能します。その適正な解釈運用について深く学んでいきます。宗村 和広 教授青山学院大学法学部卒業、専修大学大学院修士課程法学研究科私法学専攻修了(法学修士)、同大学院博士後期課程民事法学専攻退学、信州大学教養部講師、同大学経済学部講師・助教授、同大学大学院法曹法務研究科教授を経て、現職 刑事法と国際法が交錯する領域である、「国際刑法」が専門分野です。内容は多岐にわたりますが、一例を挙げると、国外で犯罪行為が行われたがその行為者が日本国内に所在するときに、いかなる範囲で日本刑法の適用が可能か(刑法の場所的適用範囲)、ジェノサイドのような国際法上の重大犯罪に関与した者の刑事責任を、いかなる理論的枠組の下で問うことができるか(国際犯罪に対する共犯の責任の範囲)といったものが挙げられます。また、現在では、越境的に活動する詐欺グループ等が、犯罪を通じて莫大な利益を得た場合に、これをいかなる方法ではく奪するか(犯罪収益の没収・追徴)についても、興味をもって研究を行っています。横濱 和弥 准教授慶應義塾大学大学院修士課程修了(2011年)および同博士課程修了(2019年)。博士(法学)。その後、日本学術振興会特別研究員PD(京都大学)、信州大学経法学部講師を経て、2021年より現職。 家族法は、誰もが必ず所属する家族という集団にかかわる法規範であるので、その現状を学び、課題に向き合っていくことは、必ず皆さんの将来の役に立ちます。 元々法律というルールは所謂「法則」と異なり、社会の価値観に根ざして作られており、価値観が変われば自ずとルールも変わりますが、特に昨今、家族をめぐる価値観が大きく移り変わってきています。同性婚を認める、生殖補助医療技術を用いて子をもうけることを認める、生物学的に何の繋がりもない者同士に親子関係を認める、などの動きがこれにあたり、これらとどう向き合っていくかを考えることは、家族の一員として生活する皆さんにとって、有意義なものとなるはずです。 家族法の知見と直結する職業は、法曹、家庭裁判所調査官など、それほど多様ではありませんが、家族間の紛争を具体的妥当な解決へ導くための思考を磨くことは、皆さんが卒業後どのような進路を取る場合でも、必ず自分の人生を切り拓く力になるはずです。 「グローバル化」する社会の下で、各国が協力して犯罪の抑止に対応するときには、条約等により、各国(日本を含む)で従来存在しなかった、異質な法概念を導入するよう求められることも少なくありません(物議を醸したいわゆるテロ等準備罪もその一例でしょう)。しかし、新たな法概念の導入にはもちろんデメリットも存在しうるところであり、たとえば従来の自国の法体系を崩すことにもなりかねません。それを回避するためには、自国の制度および国際的に導入が求められている制度の両者と向き合い、整合させる努力が必要となります。「グローバル化」は否応なく進展する現象であり、このような姿勢はますます重要となっていくでしょう。 教育面では、犯罪抑止のための国際協力としていかなる制度が存在するのかについて学ぶため、講義(国際刑法など)・演習(基礎演習)の授業を実施しています。これらを通じて培った文献・統計調査能力、日本刑法・国際法にまたがる横断的な知見は、民間企業・公務員のいずれを目指すにあたっても、有益なものたりえます。総合法律学科総合法律学科家族にかかわる法制度を学ぶ刑事法と国際法の両者にまたがる横断的な分野を探求する
元のページ ../index.html#24