経法学部研究紹介2023
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研究の未来と卒業後の将来像研究の未来と卒業後の将来像主な研究事例14『資本論』初版(1867;法政大学大原社会問題研究所所蔵)財務省の協力を得た政策企画実習主計局主査(右側)に対して模擬的に予算を要求。「素晴らしい政策だけど、税金を使って予算を付ける理由は?」① 著書では1998年金融システム改革法以降の20年間に施行された規制を整理し、顧客保護への流れを解説。②地域銀行によるシステム共同化を体系化。・恐慌論・景気循環論に関する理論的研究・国際通貨ドルの流通根拠をめぐる研究・資本主義の歴史的発展史に関する研究・21世紀型金融危機に関する研究・価値論・価格論・転形問題に関する研究・貨幣論に関する研究など。 「財政・金融政策全般」を研究しています。特に、金融制度改革、ITの進展を背景としてフィンテック(=Finance+Technology)や暗号資産などが金融システムに与える影響などを研究しています。我が国財政は社会保障関係予算を中心に大幅に増加し、債務残高は国内総生産(GDP)の2倍を超え、財政健全化が喫緊の課題となっています。また、金融市場についても少子高齢化、低成長を背景に低金利の時代に入り、預金を集めて融資してお金を貸して利鞘を稼ぐというビジネスモデルが崩れ、金融機関の経営は悪化し続けています。このように、財政・金融政策ともに手詰まり状態になり、将来が見えにくくなっています。 財務省・金融庁等に33年間勤務した経験を踏まえ、財政・金融政策の現状や課題を検証し、政策提言を目指しています。山沖 義和 教授1982年慶応義塾大学経済学部卒業。大蔵省(現・財務省)入省、金融庁等を経て、2009から3年間、信州大学に出向。2015年財務省退官後、経済学部教授、2017年経法学部長に就任、2020年総合人文社会科学研究科長に就任(~2022年)。2022年SBI金融経済研究所顧問に就任。 資本主義経済の運動を、理論と歴史、さらに現状から分析することを研究課題としています。K.マルクス『資本論』を主なベースとした経済原論が専門です。私たちが今、そのもとで暮らしている資本主義経済とは、16世紀にヨーロッパの一角に発生し、その後数百年のうちにほぼ全世界を覆うに至った経済システムです。この資本主義経済は、資本主義である限り、そこから離れることのできない共通のメカニズムに等しくのっとりながら、歴史的には各国経済として、それぞれ独自な発展を遂げてきました。その延長線上に、今日私たちが目にする現代の世界経済が存在しています。資本主義経済の現状を、そうした原理的な論理性、通時的な歴史性、共時的な空間性という3面から総合し、研究することを目指しています。吉村 信之 准教授東京外国語大学外国語学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。東京大学大学院経済学研究科・経済学部助手、信州大学経済学部講師、同助教授、同准教授を経て現職。 財政政策・金融政策は我が国の進むべき道を決めています。財政(予算)の場合、限られた財源(収入)の中で、各施策の間の優先順位を付けていくことが必要です。この優先順位を考え、決めていくために必要となる基本的な考え方が身に付くようになります。また、お金という商品を取り扱う金融政策は景気を左右し、企業活動に大きな影響を与えますので、その効果を知ることは経済の先行きを読むことに通じます。 教育では、実務を模擬的に体験する科目(財務省の協力により自らが政策を企画し、それに基づき予算折衝を行う政策企画実習、国税局の協力により税務調査や差押え業務等を模擬体験する税務実習、金融機関の協力により個人・企業向け融資を考えるビジネス実習など)を担当しています。在学中に講義で学んだことが社会に出てどのように役立つかを先取りして体験し、求められる能力がどのようなものか、分かるようになります。 この結果、受講生の卒業後の進路は、公務員や金融機関を中心に希望する職種に就職しています。 経済学という学問は、しばしば「市民社会の解剖学」と言われます。人間は、物質的な環境から生活資料や生産手段を取得し消費しなければ生きていけませんが、近代の市民社会(資本主義社会)は、これを売りと買いの関係(商品経済といいます)で充足している点に最大の特徴があります。18世紀のアダム・スミス以来、経済学は、売りと買いによって果たされる社会的な物的再生産関係を明らかにしようとしてきました。その意味で経済学は、その折々の社会の客観的・物量的な構造を、最も分かりやすいデータや論理によって明らかにしてくれる「社会の解剖学」なのです。経済学を学ぶことは、社会を理解するツールを身につけることになります。 ゼミでは、まず経済学の古典を読み解き、その論理を自分なりに咀嚼できる読解力を養うとともに、その後はそうした論理を経済の現実に応用できるように、世界経済や日本経済に関する文献を読みます。その中で議論を戦わせることによって、ディベートする力を身につけます。こうした能力はきっと社会に出て役立つはずです。応用経済学科応用経済学科お金という切り口から国の政策(=財政・金融政策)を考える経済の理論、そしてそれに基づいて経済の歴史と現状を考える

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