仏教は今,世界の各地で研究されています。そのため,世界の研究者との学術交流を通して,国際ワークショップや国際学会などが盛んに開催されています。また,仏教研究は言語や文化の研究と切り離すことはできません。仏教研究から異文化理解を深め,グローバルに活躍する人材が育つことを願っています。〔著書〕『仏教哲学序説』(ぷねうま舎,2020),Omniscience and Religious Authority: A Study of Prajñākaragupta’s Pramān4avārttikālan4kārabhās4ya ad Pramān4avārttika II 8-10 and 29-33. LIT Verlag, 2014; 『シリーズ大乗仏教9 認識論と論理学』(春秋社,2012) 〔「全知者証明・輪廻の論証」を分担執筆〕〔主要論文〕「仏教認識論の射程―未来原因説と逆向き因果」(『未来哲学』第1号,2020);“Dogen on Time and the Self”(Tetsugaku,4,2020);「仏教哲学の可能性―無我説をめぐる西洋哲学との対話」(『現代思想』46(16),2018);「仏教認識論とエナクティブ・アプローチ」『比較思想研究』第43号,2017;“Toward a Better Understanding of Ratnakīrti’s Ontology”, Sam4bhās4ā, Vol. 32, 2015; 「プラジュニャーカラグプタの〈知覚=存在〉説」『インド哲学仏教学研究』第22号,2015 ;“Ratnākaras´ānti’s Theory of Cognition with False Mental Images (*alīkākāravāda) and the Neither-One-Nor-Many Argument”, Journal of Indian Philosophy 42, 2014など。比較思想学会・理事日本印度学仏教学会・理事未来哲学研究所・研究員1994年,東京大学文学部(印度哲学専修)卒業,1997年,東京大学大学院人文社会系研究科(アジア文化研究専攻)修士課程修了(文学修士),2001年,東京大学大学院人文社会系研究科(アジア文化研究専攻)単位取得退学,2005年,ウィーン大学大学院文献学・文化学研究科博士課程修了(Dr. Phil.)8●現在の研究テーマ 私が研究しているのは仏教の哲学です。仏教と聞くと〈宗教〉を思い浮かべる人も多いでしょうが,仏教の開祖であるゴータマ・ブッダの言葉のなかに,そして,その言葉を受け継ぎ,そこから空の思想を紡ぎ出した大乗仏教の学僧たちの言葉のなかに,紛れもなく〈哲学〉があると私は考えます。彼らは驚くほど精緻な議論を重ねながら,自己について,世界の成り立ちについて,そして,人が生きる目的について,自らの考えをテキストに書き残しました。サンスクリット語やチベット語で残されたテキストを読み解きながら,その一文一文が意味するところを,時にその書き手が意図しなかったであろうところまで吟味し,自分が納得できる理解にたどりつくまで考えていくこと――これが私にとっての〈哲学〉の実践です。興味深いことに,彼らが論じた事柄の多くは,認識論,因果論,時間論,神の存在証明,他我問題という西洋哲学のトピックと重なります。西洋哲学の議論との比較を通して,仏教の古典に新たな息吹を宿らせることが,目下取り組んでいる課題です。仏教哲学,比較哲学●教授 護山 真也
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