農学部研究紹介2023
36/44

福山泰治郎助教金沢大学等を経て2009年より現職。土砂災害の被害を減らすためにできることや,さまざまな外力が自然環境や人間に及ぼす影響を適切に評価することに関心を持っています。図上段:斜面崩壊発生予測シミュレーションの事例(左:大分県竹田市,右:東京都伊豆大島),中段左:ネパールでの氷河湖決壊洪水調査,中段中・右:融雪泥流発生機構解明のための実験,下段:土砂移動観測サイト(左:和歌山県田辺市_電極板法,中:岐阜県高山市_振動法・音響法・電極板法,右:長野県松川町_バイパストンネルでの観測)2017年南アルプス・藪沢の雪崩による倒木春先に南向き斜面でササを採食するニホンジカ流域保全学研究室山地斜面における降雨の浸透から流出現象と斜面崩壊の関係,火山噴火による融雪現象,岩盤の凍結融解による物理的な破壊,様々な形態で起こる土砂移動,といった自然界で起こる多様な物理現象に触れ,それらによって引き起こされる土砂災害をいかに軽減するかという大きな課題に挑戦することで,安全な社会の構築に取り組んでいる,やりがいのある研究分野です。堤大三教授京都大学防災研究所准教授,三重大学教授を経て2023年から現職。専門分野は砂防工学で,斜面崩壊予測,山地河川内土砂移動計測,融雪型火山泥流等を研究。ひとつの研究手法にとどまらず,現地調査,現地および室内実験,コンピューターを用いた数値シミュレーション等,複数のアプローチから現象の理解に努めます。卒業生の多くは,国や都道府県の技術系公務員,建設系コンサルタントの技術職に就いています。流域保全学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像日本は災害の多い国です。信州は,特に急峻な山岳地帯や活火山,中央構造線沿いの脆弱な地質帯を有しており,土砂災害の多発地域と言えます。当研究室では,そのような土砂災害を極力軽減することを目的に,研究を行っています。研究テーマとしては,豪雨による斜面崩壊,火山噴火によって発生する融雪泥流,氷河湖決壊洪水等の発生メカニズムを探求し,その予測手法を開発しています。また,山体の岩盤からの湧水量を計測し,地下内部の水の流れを想定して深層崩壊の予測につなげることを試みています。さらに,総合的な土砂管理のため山地河川における土砂移動量の計測手法を開発しています。大雨や雪,地震等といった大規模なかく乱や,それにともなって生じる土砂移動等は自然現象ですが,人間の社会との接点では災害となります。人命や社会の被害を軽減するには,現象を理解し,危険な場所や条件を知ることが大切です。そこで,大雨や雪・地震・凍結融解・シカなどによる山地森林流域の土砂生産のメカニズムについての研究を行っています。現在は,雪崩によって森林が大規模にかく乱された南アルプスの亜高山帯で,倒木や雪崩跡地の土砂移動の研究や,ニホンジカが高密度で生息する地域で,シカが山地斜面の植生衰退と表土移動に及ぼす影響の研究に取り組んでいます。南アルプスなどの中部山岳域や,土砂災害の現場などをフィールドとして,その場所の地形や地質,気象,植生,履歴を理解し,そこで起きている現象を見てメカニズムを考え,防災・減災につなげたいと考えています。研究テーマについて真摯に考え,フィールド調査やディスカッション,既往研究のレビューを通じて,現象やメカニズム・対策について考える力を身につけ,国土保全や防災の分野で活躍できる人材の育成を目指します。B森林・環境共生学コース森林・環境共生学コース土砂移動の中心地で災害の防止に挑む土と水の動きをとらえることで土砂災害を軽減し,環境を保全する32

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る