農学部研究紹介2023
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木材利用学研究室(末定)では、木材を建築物の構造材料として利用するための研究を行っています。木材の炭素貯蔵効果を最大化するためには、木材をマテリアルとして長期的に利用することが望ましく、長期の利用が想定される建築物への利用は理にかなっているといえます。しかし、生物材料である木材は1本1本の性能にばらつきがあり、さらに樹種によってもその特性が大きく異なります。そこで、木材を建築構造材料として利用し、安全な建築物を設計できるように、木材の物理的・力学的特性の把握とその解明を目指しています。その上で木材の効果的な利用法を開発するための研究を進めています。農地から発生する砂塵の発生メカニズムを明らかにして、その抑制技術を開発する精度の高い観測によってデータを取得する広葉樹材のめり込み性能を把握するための試験広葉樹材を利用した柱-貫接合部の試験木材利用学研究室末定拓時助教森林総合研究所を経て、2022年4月より現職。博士(農学)専門分野は木質材料学・木質構造学農業工学研究室では、さまざまな地表面に出入りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出するための研究を行っています。地表面を出入りする放射や熱エネルギーは、農地では蒸散や土壌水分消費、橋梁路面では路面凍結、人工芝のピッチやアスファルト面などでは、暑熱環境などを形成します。最新の観測機器を多数備え、精度の高い観測を行うと同時に、温度の観測値は研究室で継承された基準温度計を使用して校正され、古いデータでも正確に比較ができます。環境の形成要因を明らかにすることで修復が必要な場合は対応策を技術として確立することを目指します。農業工学研究室鈴木純准教授博士(農学)、修習技術者(農業)。長野県技術吏員(農業土木)を経て、1996年信州大学に着任。さまざまな地表面の放射や熱エネルギーの振る舞いについて、気象学や土壌物理学を応用した研究を行っている。研究から広がる未来人工林資源を持続的に利用するには「伐って、植えて、育てる」循環を適切に回すことが必要です。現在は充実した人工林資源を伐って使うことが課題となっています。木材の物理的・力学的特性を解明することができれば、木材をより自由に、効果的に建築物に使えるようになり、木材利用がさらに進むことで循環型社会の形成に貢献できると考えています。卒業後の未来像信州大学農学部の森林に囲まれた恵まれた立地による教育環境を活かし、森林から木材の利用までを俯瞰できるような人材を育成することを目指しています。研究から広がる未来卒業後の未来像着任以来、トウモロコシ畑を試験地として、熱収支の特徴を検討しています。トウモロコシのような、背(草高)が高く葉の面積(葉面積)が大きい作物は,基準の蒸発散量を20%程度上回る蒸発散が確認できます。この形成機構を解明するため、緑被空間面積率(GSAi)を導入した蒸発散のモデリングに取り組んでいます。2016年までに、なぜ約20%多く蒸発散が生じるのかを明らかにしました。研究の成果によって、水の効率的利用が求められる地域で、水資源を高度に利用した灌漑農業が可能になります。このほか、高地の紫外線、橋梁路面凍結、農地砂塵、暑熱環境などの様々な現象のメカニズムを解明することで、環境修復やリスク軽減などの学術的、技術的な提案が可能になります。研究室のOB・OGは、幅広い分野で活躍しています。多くは行政技術者(公務員)、土木(橋梁)技術者、造園技術者です。海外の大学院に進学後、そのまま海外で活躍する林業技術者(インドネシア)や国連職員(イタリア)もいます。また、工業高等専門学校や高等学校で教育に従事する者もいます。森林・環境共生学コース森林・環境共生学コースさまざまな地表面に出入りする熱エネルギーの形態を明らかにして、よりよい農村空間を創出します木材の物理的・力学的特性を把握し、安全な建築物の設計につなげる31

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