2022 繊維学部研究紹介
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52山本博規准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野は、細菌細胞で機能している分子の性質を調べる微生物学や、枯草菌等の細菌が持っている潜在能力を活用するための応用微生物学。矢澤健二郎助教東京工業大学で博士号を取得後、山形大学での博士研究員、理化学研究所での特別研究員を経て、現職。分子生物学と高分子化学の2本立柱で、クモやカイコのシルクの神秘を解明したい。教員紹介山本研究室では、枯草菌が持つ潜在能力を最大限に活用するために、細胞表層を修飾するテイコ酸ポリマーが担っている機能の解明や、分泌タンパク質がどのような機構により正しい位置に局在化されるのか等について研究を進めています。将来的には、類縁細菌が持つ遺伝子資源の有効利用や、病原性細菌の効率的な防除システムの構築等に応用できる技術の開発を目指しています。卒業後は食品関連会社や製薬会社に就職するケースが多くなっています。また、研究を通して得られた知識や経験を発展させて、国内外の研究機関でさらに研究を続けている人もいます。その他、行政機関や学校教員として、大学で学んだ知識を社会に広める立場に進むケースも見られます。教員紹介クモやカイコの糸は軽く、強度と柔軟性を併せ持ち、細胞毒性が低く、まさに「夢の繊維」です。射出過程に高熱を必要とする化学繊維の製造過程と比較して、クモやカイコは常温で糸を射出します。クモやカイコの糸の製造過程を解明し、人工シルク糸を創り出すことができれば、産業応用が可能です。国立大学で唯一の繊維学部で、クモやカイコのシルクの研究を通じ、仮説を実験で証明する楽しさを共に分かち合いたいと思います。自分で計画を立てて実験し、得られた結果をチームの皆で討論した経験を生かして、皆さん一人ひとりの個性が社会で発揮できることを目指しています。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像クモをスポンジの間にはさみ、脚を固定し、糸を取り出す。巻き取った糸は光沢があり、手で触れると、その強度を実感できる。細胞表層を修飾するポリマー成分を変化させた場合、細胞にどのような影響が見られるか、蛍光顕微鏡等で観察しています動物細胞の免疫を活性化する枯草菌由来成分の探索も進行中サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cmクモは体内でシルク溶液から糸へ変換する。写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm微細な変化も見逃さないように電子顕微鏡でも観察します写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm枯草菌(納豆菌の類縁菌で産業的にも重要な細菌)は古くから研究されている土壌細菌であり、病原菌から植物を保護したり、有機物の堆肥化や汚水の浄化などに役立っています。また産業面でも、酵素およびビタミン類、抗生物質等の有用物質生産に利用されています。山本研究室では、以前より枯草菌のゲノム解析(国際共同研究)に携わってきました。現在も、枯草菌が保持している約4,100遺伝子が担っている機能を解明するために、国内外の研究室と連携しながら、より詳細な研究が進行中です。このような研究を通して、枯草菌を一つの重要な微生物資源ととらえ、その理解を深めるとともに、さらなる活用に向けた取り組みを進めています。クモやカイコの作り出すシルクはタンパク質で構成され、強さと延びを兼ね備えています。クモの糸に関しては、ヒトの髪の毛の約10分の1の太さでありながら、直径3㎜程度まで集めると、体重60㎏の人間を支えることができます。しかし、天然のクモやカイコの糸を人工的に創り出すことは未だ困難です。クモやカイコは小さな体からは想像できないような精巧な仕組みで、水素イオン濃度、塩濃度、水分含量、溶液の射出速度を変化させていると考えられていますが、詳細は未だ分かっていません。長い年月をかけて進化したクモやカイコが作り出すシルクの神秘を、学生の皆さんと共に分かち合い、得られた知見を産業応用に役立てます。応用生物科学科応用生物科学科微生物資源の有効利用を目指す~枯草菌が持つ潜在能力の解明と応用~クモやカイコが作り出すシルクの神秘に迫る!

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