2022 繊維学部研究紹介
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50教員紹介脱細胞化組織は原料特異的な機能を有しており、生体内で組織再生や創傷治癒を促すことが期待できる材料と考えられています。幹細胞などと併用することで、複雑な生体組織や臓器を生体内外で作り出すことが可能になるかもしれません。また、生体材料開発に異分野の技術を応用することで、今までにない性質を持つ材料や技術の開発が可能になると考えています。根岸淳准教授東京医科歯科大学で博士号(学術)を取得、日本学術振興会特別研究員(PD)、株式会社ADEKA研究開発本部研究員、信州大学助教を経て現職。生体由来材料の開発、解析を目的としている。研究を通して自ら考え行動すること、チームとして作業することを習得してほしいと考えています。研究室での経験を活かして、様々な分野で活躍してくれることを期待しています。教員紹介遺伝子組換えはアグロバクテリウムの例を見ても分かるように、自然界でも起こっている現象です。これを応用することで、現在海外で栽培されている農薬を必要としない作物だけで無く、医薬品や工業原料も植物で作ることができるようになります。今は石油から作られているプラスチックなどの工業原料も遺伝子組換え植物を使用する事で、大気中の二酸化炭素と太陽の光を利用して作られるようになるでしょう。野川優洋准教授長岡技術科学大学助手、信州大学繊維学部助手等を経て、2009年より現職。研究分野は植物宇亜微生物の遺伝子工学や応用微生物学。野川研究室では、生物関係の研究を経験してきていることから、食品会社や製薬会社への就職が多いですが、コンピュータ関係、化学関係など様々な会社に就職しています。また、公務員や教員として活躍している卒業生もいます。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像遺伝子組換えでサイトカイニンの発現量を増やし、頂芽優勢の状態から枝分かれが促進したクワ。In planta形質転換法で作出した。脱細胞化組織の原料特異的な機能(神経突起伸長促進)真空加圧含浸(VPI)による多孔質材料への細胞導入野生型タンパク質アグロバクテリウムのDNAを植物の核へ輸送するタンパク質を葉緑体へ輸送するように改変た。青:核、緑:アグロバクテリウムのタンパク質非形質転換体改変型タンパク質形質転換体生体組織から細胞を除去した脱細胞化組織は細胞外マトリックス(ECM)で構成され、組織特異的な機能を持つことが注目されています。当研究室は様々な組織から脱細胞化組織を作製・解析することでその要因や特性を明らかにし、組織再生へ応用することを目的としています。また、金属加工・食品加工分野で使用されている真空加圧含浸法(VPI)は、溶液などを材料へ効率よく導入する技術です。この技術を生体材料研究に応用し、細胞含有多孔質材料や新たな性質を有する複合化材料の開発にも取り組んでいます。アグロバクテリウムは自分の持っている遺伝子を植物細胞に輸送して、植物染色体に組み込むことができる細菌です。つまり自然界で遺伝子工学を行っている細菌です。海外では除草剤耐性ダイズなどの遺伝子組み換え作物の栽培が一般化しています。これらの遺伝子組換え作物の多くはこの細菌を利用して作出されています。野川研究室では、実験操作を簡便化した植物への遺伝子導入法であるinplanta形質転換法の開発や、トランジェント発現による植物での有用物質の生産系の開発を行ってきました。現在、アグロバクテリウムを遺伝子工学的に改良することでもっとすごい能力、例えば葉緑体形質転換を可能にするアグロバクテリウムの開発を行っています。応用生物科学科応用生物科学科生物組織の特性を利用した遺伝子工学する細菌新たな生体材料の開発アグロバクテリウムを利用する

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