2022 繊維学部研究紹介
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47堀江智明教授カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員、岡山大学資源植物科学研究所特別契約職員助教等を経て、2020年より現職。研究分野は、植物分子生理学、および植物分子・遺伝育種学。教員紹介顕微授精技術や体細胞核移植技術の確立は、細胞の「生」の定義を「ゲノムDNAが保存されていること」だけに集約しました。永久凍土に凍結状態あるいはフリーズドライ状態で埋まっている絶滅種、マンモスの生殖細胞・体細胞もこの意味では「生きている」可能性があり、最先端の生殖工学技術の力を借りることで「マンモス復活」の狼煙が揚がるかもしれません。また、再生医療の切り札である多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)をラットで樹立しました。これらを機能的な生殖細胞に分化させることができるならば、究極の不妊治療法となることでしょう。保地眞一教授雪印乳業(株)研究員、帯広畜産大学寄附講座教員、信州大学助教・准教授を経て2008年より現職。実験小動物から大型家畜、さらにはヒトに至る様々な哺乳動物の生殖細胞等を用い、生殖生理学、低温生物学、発生工学に関する研究を展開。製薬・食品関係の企業、あるいは国・地方公共団体(公務員)といった就職先が一般的です。一方、8組に1組の夫婦が不妊に悩んでいると言われる昨今、高度な顕微操作技術を習得した学生は産婦人科関連クリニックに勤め、ヒト不妊治療に携わる技術者となった例も少なくありません。教員紹介幸いにも私たちの暮らしは、年々より快適になって、食べ物に苦労する事もありません。しかし、一方で化石燃料の大量消費を基盤とした発展のツケが、今我々人間社会に重くのしかかってきています。植物基礎科学から得られた知識をうまく利用する技術があれば、近未来に危惧されている、食糧・エネルギー問題を回避するための、重要な一要素となるのではないかと考えています。これまで植物に関連する種苗会社や製紙会社、あるいは浄水器関連の会社、食品会社や教員と幅広い分野に学生が巣立っています。気候変動を実体験している世代として、自ずと環境問題への意識を持って会社や進路を選択する傾向も少なからずあるようです。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像直径100ミクロンの卵子も数ミクロンの精子も顕微鏡下で操作ラット精子頭部は釣り針状の形をしているため注入操作は困難だったが、今ではフリーズドライ精子に適用できるまで改良された三大穀類の一つであるイネやモデル植物シロイヌナズナを材料にして、植物の耐塩性の分子メカニズムの解明を目指しています。植物の耐塩性に不可欠であるNa+輸送体に焦点をあて、その輸送活性や生理機能を追求し、将来的には輸送体分子の機能を改変する事で耐塩性植物作出に繋げたいと考えています。受精直後から精子中心体を基点にして微小管繊維網が発達哺乳類における受精生理の解明と遺伝資源の保存・再生に取り組んでいる保地研究室。これまでにマウス、ラット、ウサギ、ネコ、ウマ、バッファロー、ウシ、クジラ、ヒトに至る動物種の配偶子(精子・卵子)を扱い、約100編の学術論文を公表しています。得意技は、未受精卵子や受精卵(胚)の新しい凍結保存法である「ガラス化技術」と高倍率の顕微鏡下で配偶子を操る「顕微操作」。マイクロマニピュレーターを駆使すれば受精シーンを再現した胚の作出だけでなく、クローン動物や遺伝子改変動物の創出も可能になるそうです。堀江研究室では、植物が高塩濃度環境(塩ストレス)から身を守るための仕組みを、分子生物学、分子遺伝学、生理学的実験手法を取り入れながら紐解く研究を行っています。塩ストレスは、世界農業において農産物の収量を著しく減少させている頭の痛い問題です。気候変動に伴う土壌の塩類化が、世界の農地で近年激しく進んでいます。世界人口が増加を続ける傍ら、日本では耳慣れない“塩害”により、近未来の食糧生産が脅かされています。塩害地での農産物収量増産を可能とするために、イネを中心に耐塩性穀類を作出するための技術開発を目指しています。応用生物科学科応用生物科学科顕微操作を駆使して受精の神秘に迫り、遺伝資源を保存・再生・活用する!将来の食糧生産の一助となる耐塩性作物を作ろう!

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