2022 繊維学部研究紹介
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45田口悟朗教授信州大学繊維学部や信州大学遺伝子実験施設で助手を務めた後、2019年より現職。研究分野は、植物の有用物質生産に関わる酵素反応や遺伝子解析、その有効活用を図るといった応用生物化学。玉田靖教授京都大学大学院卒業後日本合成ゴム(現JSR)株式会社で研究員として勤務した後、農業生物資源研究所で、シルク利用研究に従事、2013年より現職。専門はバイオマテリアル研究。教員紹介植物は周囲とのコミュニケーションのためにさまざまな物質を作り出しますが、それが、人にとっては薬となったり、いい香りだったりと、体に良い効能がいろいろあります。現在研究室で研究を進めている、植物が身を守るため有害な物質を無毒化する機能は、逆に環境浄化などにも使うことができます。こういった植物が持つチカラを研究し解明することで、私たちの生活に応用できることがたくさんあるのです。人や環境に有益な研究は幅広くニーズがあり、主に食品関連への就職が多い田口研究室。その他にも分析関連の業務を行う会社や、薬品関連、農業関連への就職も少なくありません。高校の先生として活躍している卒業生もいます。教員紹介2012年ノーベル賞のiPS細胞の開発により、再生医療の実現が近づきました。しかし、細胞のみでは十分な再生治療が期待できない場合もあります。組織を再生する細胞を支える材料の開発も重要な課題です。シルクが、その材料の一つとして治療に貢献でき、われわれの研究が多くの患者さんの幸せにつながることを期待しています。シルクは医療分野のみならず、広い産業分野でも活用できる可能性があります。それらを一緒に見つけませんか?工学・農学・医学という学際的、多彩な業種の業際的な分野の研究となりますので、卒業後は、多様な視点から課題を解決できる人材となって活躍してもらいたいと思います。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像抗酸化物質を含む身近なワサビの葉からDNAを抽出カイコ(家蚕)(左)と繭(右)。カイコは、純度の高いシルクタンパク質を環境低負荷で効率良く生産するタンパク質製造工場ですシルクタンパク質(フィブロイン)100%から出来たスポンジ材料。現在、軟骨再生用や創傷保護治療用材料としての研究が進行中ですサイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cm桑の葉には、血糖値を下げるのに有効な成分が含まれている。その成分ができる仕組みについて解析をすすめているサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cmサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm抽出した植物の遺伝子の塩基配列をパソコンで解析する植物の持つさまざまな機能について研究している田口研究室。例えば、植物は作った物質に糖をつけて細胞の中に貯め、必要なときに糖を外して使う機能があります。この機能を、薬などの物質の加工に応用できないかと考えています。水に溶けにくい物質に植物の酵素を使って糖をつけ、水に溶けやすくしたり安定性を高めたりすることが可能になるのです。その他、私たちの健康に役立つ植物成分がどのように作られているのかを調べています。植物の機能を科学的に追究することで、私たちの快適な毎日につながっていきます。シルクは、繊維の女王として6000年以上前から利用されている優れた衣料用材料です。また、カイコという生物が生産する環境に優しい生物資源材料でもあります。シルクの衣料分野を超えた新しい利用技術の開発を中心に研究を進めています。絹糸は外科手術で傷を縫うときの糸として古くから現在も臨床で使用されています。また、最近の研究では、シルクから作った材料が、再生医療で細胞の足場として、良い性質を示すことが多く報告されています。研究室では、シルクの医療分野への活用を目標に、シルクの構造や性質を新たな観点で解析し、さらに、新しいシルク加工プロセスの開発を通して機能性シルクの創出を目指しています。応用生物科学科応用生物科学科知られざる植物のチカラ。暮らしを豊かにするその能力とは?シルク利用の新分野開拓!再生医療などの医療分野への活用を目指して

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