2022 繊維学部研究紹介
40/62

39教員紹介天然高分子から高機能材料を開発することにより環境にも優しい循環型のエコマテリアルとしての応用が期待されます。また、私たちの体はタンパク質や多糖類等の生体高分子から形成されています。天然由来高分子から作り出される材料は生体親和性にも優れ、バイオ、メディカル分野での応用展開も期待されます。寺本彰准教授民間乳業会社研究員、信州大学繊維学部教務員、助手等を経て、2008年より現職。研究分野は細胞培養用基材の開発、培養細胞の機能評価など。卒業生の大半は大学院修士課程に進学しています。修了後の進路としては、様々な業種へ進んでいますが、主として材料メーカー、化学メーカーなどへ就職し活躍しています。教員紹介バリア性を高め何も通さない高分子膜を開発する一方で、「特定の物質だけを通す」高分子も研究中。この特性を活用すれば、大気から酸素のみを取り出したり、海水を真水に変えるといったことも可能に。人工透析など医療の現場での利用も考えられています。またこの技術は私たちの生活に直接生かせるものだけでなく、研究者が実験を行う際にも非常に役立つ技術でもあり、多くの開発にひと役かっているのです。平田雄一准教授明治大学理工学部専任講師、フランス国立農業研究所博士研究員、信州大学繊維学部助手等を経て、2010年より現職。主な研究分野はバリアフィルムや分離膜、染色化学等。主に化学系メーカーなどへの就職が多い平田研究室。一方、高分子や膜の製作から評価に至る一連の過程を体験することで、物事を広く見る目を養えることから、業界を超えた幅広い研究分野で卒業生が活躍しています。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像左が塩水、右が真水で、間にあるフィルムを通して塩分がどれだけ真水側に移動するのかを、塩分濃度計で測定するバクテリアセルロース(BC)とPNIPAMの複合ゲル。複合化することにより強靭な刺激応答性のゲルとなる。天然多糖類であるキトサンを用いた熱可逆応答性のゲル化。サイズW7.5cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦2.5cmサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横11cm、縦22.2cm酢酸セルロースをアンモニアで煮て、高分子の変化を探るサイズW3.6cm×H4.35cm配置位置横14.9cm、縦22.2cm界面活性剤による膜の作製も学生が取り組んでいる我々の社会は石油化学工業によって作り出された高分子材料などを用いて成り立っています。しかし石油資源は無尽蔵に生まれるものではなく有限であり、それを代替えすることのできる資源の活用が重要な課題になっています。植物由来のセルロース、カニ殻由来のキチンなどの天然多糖類はバイオマスと呼ばれ最も豊富に存在している高分子材料です。当研究室ではこれらの天然高分子を素材とし、刺激応答性などの機能性を付与することにより新しい材料の開発を試みています。ペットボトル等に代表される合成樹脂の高分子膜には、実は非常に細かい隙間が空いています。と言っても、液体は通さずにわずかな気体を通す隙間ですが。この気体の通りにくさ(バリア性)を100万倍ほど高めて、電子材料向けのバリア材ができないかという研究を進めているのが平田研究室。実現すれば、液晶テレビや携帯電話の画面がガラスからプラスチックに切り替わり、価格を抑えることまで可能になります。またガラスよりも薄く、軽く、柔らかいため、破損する可能性も低くなるほか持ち運びも便利になるので用途も格段に広がるという、いま注目の研究分野なのです。化学・材料学科化学・材料学科天然素材を用いた高機能材料の開発ペットボトルを水が通り抜ける!?そんな高分子膜の謎を紐解く

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る