2022 繊維学部研究紹介
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11繊維内のフィブリル構造の観察(Ultra-SAXS)接着剤の繊維化(ポリビニルブチラール:PVB)高視認性安全服に用いられる蛍光生地の光反射測定(上段図)サーマルマネキンを用いた衣服の熱抵抗値測定(下段右図)構造解析は、材料の高機能化・高付加価値化への最大の近道だと思っています。高機能を発現する構造を理解し、その構造を能動的に創り出すことを目的として、日々高度な分析に挑んでいます。高分子材料は産業用用途に応じて必要な特性が異なります。当研究室では多岐にわたる需要に適した物性・特性を発現させるための開発・分析を行いたいと考えています。繊維材料の特性を調べるには分子構造(数nmオーダー)から繊維同士の絡み合い構造(数百µmオーダー)まで広いスケールでの解析技術が必要です。この議論を可能にするためにX線散乱・X線CT技術の両方を駆使し、高分子材料の特性を発現するメカニズムを考察しています。繊維製品の開発においては生活者一人一人の視点からそのあり方を考えることが重要です。身の回りには様々な機能性をもったテキスタイル・アパレル製品があり、市場に流通する前には必ず性能評価試験が行われ、消費生活に要求される機能性を満たしているか検査しています。当研究室では、繊維工学に基づいて機能性の評価方法やその評価基準を正しく理解し、評価結果を分析することが、生活者に寄り添った製品設計のヒントになると考えています。特に、衣服内外の安全性という観点から、テキスタイルやアパレルが使用される状況を考慮した評価を行い、機能性が発現するメカニズムと人体に及ぼす影響の解明に取り組んでいます。先進繊維工学コース先進繊維工学コース教員紹介現在において高分子材料はあらゆる分野・デバイスに用いられています。しかし実際に使用される繊維強度は、まだその分子鎖1本の強度の10%にも達しておりません。繊維材料の高強度化・高機能化は車体、人工臓器、光学機器、スポーツ用品等の分野への軽量化や地球環境負荷の低減に大きく貢献できます。冨澤錬助教2019年に信州大学繊維学部にて博士号取得。その後、2年間積水化学工業株式会社にて電池研究に従事。2021年4月より現職。高分子材料の産業用途やデバイス内での働きにも注目しながら研究を進めます。卒業生には繊維業界のみならず、化学・工学メーカーに繊維の重要性を伝えられるような人材の育成を目指します。教員紹介日々進化を続けるテキスタイル・アパレルの品質を保証していくためには、評価規格のアップデートも欠かせません。当研究室が取り組む評価技術の探求は、いわば新しい"ものさし"をつくることであり、このことは生活者にとっての新たな価値観の創出につながるものと信じています。丸弘樹助教信州大学大学院を修了後、栃木県産業技術センター技師、日本女子大学家政学部講師を経て、2022年より現職。専門分野は繊維工学、感覚計測工学、衣環境学。国内唯一の繊維学部において繊維の名を冠した学科で専門性を身につけた卒業生には、繊維産業の次の時代を切り拓くキーパーソンとなり、大きく飛躍してくれることを願っています。研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像先進繊維・感性工学科先進繊維・感性工学科実用途を意識した新規高分子材料の開発とX線による構造解析をしています生活者の未来を照らす繊維工学

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