ol.7■■■■■■■■■軟骨、骨など人体の3次元的な組織の再生のためには、細胞をより浸潤させる足場材料として「多孔質材料」が使用されていますが、実際には細胞が入っていかない、「浸潤不全」という問題が指摘されていました。(左図)この課題を真空加圧含浸法が一挙に解決しました。(右図)しかし再生医療技術は、まだ単層の細胞が主体の段階で、かの有名なiPS細胞でさえ実現できているのは2次元まで。最終的には人体という3次元組織の再生が必要とされるのですから、単層ではなく3次元的な組織への応用が不可欠とされてきました。例えば、大きく欠損している組織には大量の細胞移植が必要となりますが、その際、移植細胞への栄養供給不足による壊死などが起こりうるため、3次元的な解決の手段として細胞の足場が必要になる、ということが分かっています。PROFILE2013年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科修了2016年 信州大学学術研究院(繊維学系)助教2019年 東京医科歯科大学生体材料工学研究所 非常勤講師2021年 信州大学学術研究院(繊維学系)准教授信州大学学術研究院(繊維学系)そんな3次元的な組織再生のための足場材料として、現在使われているのが「多孔質材料」です。細胞が孔の中に入り込み足場に生着。その足場を使って3次元的な細胞移植を実現しようというものですが、実際のところ、細胞が多孔質材料になかなか導入されない「浸潤不全」とい11今回ご紹介するのは信州大学学術研究院(繊維学系)根岸 淳准教授が開発した特許です。現在再生医療の領域で3次元的な組織再生に必要な細胞を支える「足場材料」として「多孔質材料」が使用されています。しかし、実際は細胞がその材料の中になかなか入っていかない「浸潤不全」という問題が指摘されており、この課題を、食品や金属の加工に使われる「真空加圧含侵(がんしん)法」と呼ばれる技術を用いて一挙に解決したのがこの特許です。複合化生体材料、3次元組織の再生用材料、細胞機能の解析手法などに活用いただける画期的な特許で、現在、試薬メーカーや研究開発関連会社に向けた多孔質材料入りの圧力キットの設計も進めています。(文・越智 加代子)3次元組織の再生医療に不可欠な足場材と課題再生医療とは、病気やけがで機能不全になった組織、臓器を再生させる医療。現在は、この技術を応用することで、創薬にも役立つと期待されている分野でもあります。信州大学の研究シーズを技術移転する信州TLOとのコラボで制作した、特許技術「見える化」映像シリーズの第7弾。根岸 淳 准教授V細胞などを含有した多孔質材料で、生体内外の組織再生を実現!真空加圧含浸法による多孔質材料への固体の封入
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