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Q佐藤初代館長(以下役職略):信州大学自然科学館の収蔵物は多岐にわたりますが、とくに植物関係では、当時教養部におられた清水建美先生が1975年頃に立ち上げた長野県植物研究会の資料がベースになっています。標本をはじめとする膨Natural science special featureShinshu University(聞き手:信州大学広報室)大な資料が集まっていたのですが、この科学館ができるまでは保管場所が定まっておらず、医学部の赤レンガ倉庫を借りるなど色々な場所をさまよっていました。動物関係の資料も同様の扱いで、今では超貴重なライチョウの剥製などは教養部の物置で邪魔者にされていました(笑)。山田第3代館長(以下役職略):あまり大切にされていなかったのですね(笑)。佐藤:そこで、当時の小宮山淳学長をはじめとする先生方と、そういう行き場のないお宝のために資料館的なものができたらいいですね、と話し合っていたんです。そんな時に、たまたまキャンパス内の廃液処理場を何かに活用できないかという話が持ち上がり、温めていた構想が実現に向けて動き出しました。山田:建物の構造が少し変わっているのは、もともと廃液処理場だったからなんですね。佐藤:1階と2階の間には、タンクに上るためのらせん階段がありました。あれも残したかったのですが構造的に難しいということで、やむなく撤去することになりました。開館当初は資料を運び込むのが精いっぱいで、展示としてきちんと見せられるようになったのは5年くらい経ってからだと思います。山田:展示のレイアウトは、開設の頃と比べてずいぶん変わっているかもしれません。佐藤:山田先生が学生さんとのパイプをたくさん作ってくれたお陰ですね。展示旧制松本高等学校に所蔵されていた貴重な有機色素(染料)標本なども展示中。たりしてくれているんです。私が何かしたというより、学生たちが少しずつ創り上げてくれたということです。そういえば、2012年のオープニングの時は、なんと解剖学者で東京大学名誉教授の養老孟司先生が来校され、講演され話題になりました。佐藤:そうでしたね。有名人なので本来は無理なスケジュールだったのですが、養老先生は昆虫採集が趣味で、ゾウムシの研究でも知られる方。大好きな昆虫標本が見られるということで、富山県での用事の後に途中下車して昆虫採集をするといった理屈をつけて、強引に日程に組み込んでくれたんです。山田:信州の昆虫がきっかけでご縁が結ばれたわけですね。に関していちばん活躍していただいたのは、おそらく山田先生の学生さんだと思います。本当にありがとうございます。山田:いえいえ。やはり自然科学が好きな学生が何人かいまして。そういう学生が、知らないうちに配置を整えたり、展示物の説明書きを増やし自然科学館(松本キャンパス)高山地帯に抱かれた信州の豊かな自然の中で行う多様な自然科学の研究は、前身校の時代より続く信州大学の特徴の一つ。とくにフィールドワークを通した調査では、その場所でしか得られない貴重な研究資料が蓄積されます。そうした信州大学が所有する膨大な“お宝”を集めて展示しているのが、信州大学自然科学館です。建物は廃液処理施設から、2012年8月に科学館に生まれ変わり開館。今年でちょうど10周年を迎えます。今回は佐藤利幸初代館長と、山田桂第3代館長をお迎えし、開館の背景や、収蔵品を後世に残す意義などについて熱く語っていただきました。04信州大学学術研究院(理学系)教授理学部理学科地球学コース第3代自然科学館館長信州大学自然科学特集自然科学館誕生の背景や経緯について行き場のないお宝のための施設をと、ずっと考えていました。(佐藤)山田 桂

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