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東城 幸治03自然科学特集スピンオフコラム世界初、サル類の魚食行動の観察・撮影に成功信州大学学術研究院(理学系)教授(副学長(広報、学術情報担当)・附属図書館長)厳冬季の上高地にくらすニホンザルの糞内DNAのメタバーコード解析から、イワナ類のDNAが検出されたことをScientific Reports誌に公表しました。2021年11月末のことです。複数年の調査で2割弱の糞からイワナDNAが検出されていることから、イワナの捕食は確実だろうと思いつつ、その瞬間を観ていないことや、上高地の関係者に尋ねてもサルの魚食については噂さえ聞かず、不安に感じておりました。この論文公表が多くのメディアに報じられると、2021年1月の上高地で、イワナ類を咥えて歩くサルが座り込んで完食するまでの行動を写真撮影されていた方から信州大学広報室に連絡があり、写真利用も快諾頂きました。2022年元日には、この写真に基づく関連記事をNature Portfolioに記しました。1月後半からは、NHKとの共同研究として、多数の赤外線センサーカメラなどを導入した撮影に挑み、ついに魚食の瞬間を捉えることができました。これらの映像は、番組「ダーウィンが来た!」でも放送されました。このような冬以降の急展開は、様々な事項がタイミングよく進んだ幸運もありますが、その陰には上高地でのセンサーカメラ設置許認可申請を急ピッチで進めた研究推進部、国内外へのプレスリリースを担当した国際学術広報・国際部や広報室の協力など、チーム信大の見事な連携がありました。現在、魚食行動の気象条件や狩場の特性などを画像分析した成果をNHKとの共同研究として論文投稿中です。Natural science special featureShinshu University©NHK©NHK冬期の諏訪湖内に出現するビッグホールの様子14湖面が凍結した際に複数見られる釜穴は、湖底からのガスが原因と言われていましたが、その主成分はこれまで明らかにされていませんでした。今回、諏訪湖の湧出ガスを採取し、詳細に解析した結果、地下の炭素は、3〜4万年前に生成された有機物から成ることが判明。また同時に、諏訪湖の水や藻類、プランクトンなどの水生生物を調査したところ、これらに含まれる炭素のうち、約1割程度に、過去の時代の炭素が取り込まれていることもわかりました。諏訪湖地下に蓄積した炭素が、現代の生態系の食物連鎖に影響を与えていると考えられています。今後も研究を続けることで、炭素循環の全体像の理解や、水圏生態系における食物連鎖について解明することが期待されています。(広報室)信州大学自然科学特集スピンオフコラム釜穴が開いた! 諏訪湖から湧出する天然ガスの詳細が明らかに(6月プレスリリース)信州大学学術研究院(理学系)朴虎東(パク・ホードン)教授をはじめとする、海洋研究開発機構などとの研究チームは、厳冬期に諏訪湖が凍った際にできる「釜穴(直径数メートルから数十メートルの円形に開いた穴の呼び名)」から湧出する天然ガスの主成分が、地下深くの炭素に由来するメタンガスであると発表しました。04自然科学特集

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