03八幡屋礒五郎と松島教授が開発した、とうがらしのオリジナル品種を守るための種取りなどのメンテナンス作業や、収穫したとうがらしの品質や収量の評価など、共創フェローとして多様な仕事に携わりました。中でも、近藤さんが力を注いだのが※手にするのは教授昇進記念に八幡屋礒五郎さんから送られた特別仕様缶専門のとうがらしではなく、同じく七味とうがらしに欠かせない山椒の研究です。山椒の辛味成分の含有量を測る方法が定まっていないことが、喫緊の課題になっていました。そこで近藤さんは、自身のししとうの研究で得ていたノウハウや、すでに山椒畑で蓄積されていた技術をもとに、試行錯誤を重ねて独自の定量方法の開発に成功。商品の品質安定化に貢献する結果を出しました。待ち望まれていた成果だけに、八幡屋礒五郎の皆さんからも「本当にありがとう」と喜ばれたそうです。「自分だけで進める研究と違い、共創フェローとしての研究は社員の方々のレスポンスがあり、とても新鮮でした。企業から依頼され、それに応えていくことにやりがいを感じました」と、近藤さんは共同研究の魅力を語ります。解が欠かせません。近藤さんの受け入れ先である八幡屋礒五郎は、江戸時代創業の七味とうがらしの老舗企業。松島教授とは、約20年来の親交があります。その交流の一端を担うとうがらしの共同開発は、2006年に「長野県産の原料をできるだけ使いたい」という、地域に根ざした八幡屋礒五郎の意向から始まったものです。今回、信州産学共創フェローシップ制度への参加をお願いした際には、同社の室賀栄助社長から「とうがらし業界全体にとって役立つことですから、どんどんやってください」と力強い賛同をいただきました。また、近藤さんが共創フェローとして研究した山椒について論文化したいと申し出た時も、権利が独占できなくなるといった躊松島 憲一信州大学学術研究院(農学系)教授研究力強化支援の中で七味とうがらしの品質安定化に貢献とうがらし研究の第一人者である松島教授に師事し、“ししとうの辛味”に関する研究に取り組む近藤さんが、信州産学共創フェローシップ制度に採用されたのは2021年春のこと。以来、産学連携による研究力強化支援の一環として、八幡屋礒五郎の社員の方々と共同研究を行ってきました。企業文化を感じた瞬間「とうがらし業界全体に役立つことだから…」と。産学連携を基本とする信州産学共創フェローシップ制度には、企業の理信州大学博士課程支援制度「信州産学共創フェローシップ制度」ロールモデルインタビュー近年、経済面や就職面の課題から博士課程に進学する学生が減少し、大問題に。国を挙げての対策がとられる中、信州大学も独自の支援制度、「信州産学共創フェローシップ制度」を設置、産学連携での制度設計は企業との共同研究の多さを誇る本学ならではのもの。今回は初年度に制度を活用した信州大学大学院総合医理工学研究科博士課程2年の近藤文哉さんと指導教員の松島憲一教授にインタビューさせてもらいました。近藤さんは日本三大七味に数えられる七味とうがらしの製造企業「八幡屋礒五郎」(本社・長野市)の共創フェローとして共同研究に励まれ、発見や気づきの多い実のある1年になったようです。目指せ!世界でワン&オンリーのししとうドクター !Dr.
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