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二酸化炭素皮膚センサーは、腕に巻くだけで皮膚から放出される二酸化炭素を高感度に測定できる。信州大学学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)リサーチアドミニストレーション室 准教授工学博士。2011年八戸工業大学大学院工学専攻科修了。2012年建築設計事務所勤務、同年信州大学産学官連携推進本部URA室助教。2017年より現職、OPERAプロジェクトのマネジメントや産学連携による大型研究プロジェクト推進等に従事。プロジェクトでは、多彩な埋込型・装着型デバイスの研究開発が行われました。難聴の診断と治療に関しては、一側性高度感音難聴に対する人工内耳挿入術が先進医療に承認され適応が拡大。遺伝子解析による原因検索など大きな成果もありました。装着後の有害事象発生率ゼロを目指す補助人工心臓の開発も良好な成果を示し、世界展開を見据えています。信州大学先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所の金子克美特別特任教授らは、皮膚から放出される二酸化炭素を計測する高感度センサーを開発。カーボンナノチューブを利用し、既存測定器の100倍の検出感度を実現しました。繊維学部の児山祥平助教は、光ファイバーを使ったFBGセンサーによる非侵襲多機能バイタル測定器を開発。小型化を実現し、世界初のFBGバイタル測定器の実用化に近づきました。医療機器開発へのデータ利活用良質なデータをいかに早く入手するか(定仲氏)不具合データの利活用を検討(村田氏)シンポジウムでは、これからの医療機器開発におけるデータの利活用や課題などについて意見が交わされました。テルモ技術統括室ITソリューションセンター長の定仲信行氏は「医療現場ではデジタルデータが重要なものになっていく」と見通し、特に慢性疾患の領域では、患者自身がバイタルデータをスマホなどで取得し、クラウドを通じて医師が共有するなどのシス精神性発汗を高度に測定できる小型ウェアラブル発汗計。従来の1/4の小型化にも成功。テムが構築されていると説明しました。疾患マネジメントのデジタル化も進み、研究コストや時間を削減するために、電子カルテや調剤レセプトなど日常の臨床現場で得られるデータ「リアルワールドデータ」を活用した開発が注目されているとしました。また医療機器の開発プロセスでは、いかに良質なデータを早く入手できるかが重要だと話しました。膨大なリアルワールドデータの収集に当たっては、浅尾氏が「データの質が非常に大切」と指摘。「収集するときにも工夫が必要だし、データベースそのものについても項目を柔軟に変えられる設計にすることが大事」と話しました。富士通Japan第三ソリューション事業部第一ファーマシステム部マネージャーの村田幸大郎氏は、医薬品の副作用情報管理システムのノウハウをベースに、同社が提供している医療機器の不具合情報管理サービスについて説明しました。国内外の不具合や、健康被害、因果関係、重篤性、患者の情報などのデータを保持しているといい、これらのデータ活用について「不具合発生」に着目した傾向分析と、「不具合の原因・リスク」に着目した分析が行える可能性を示しました。人工心臓開発へ、部品や材料の調達に苦しんだ経験(山崎氏)対象群に使えるデータ0ppm共有できるといい(宇佐美特任教授)本プロジェクトで開発した生理学的データ統合システムについて「1991年にベンチャーを立ち入上げて人工心臓の開発を始めたときに、このようなデータを利用できたらどんなによかっただろうと思う」と北海道循環器病院先進医療研究所長の山崎健二氏は感慨を込めました。医療機器製造のノウハウが何もない状態でのスタートで「生体に埋め込む安全性の高い材料をどうやってみつけたらいいのか、電子的な部品やバッテリーなどを誰が供給してくれるのかがわからない。技術や製品を持っている企業があっても、ハイリスクデバイスに使うと説明すると供給を断られることが多かった」と振り返りました。安全性試験についても、どんな条件をクリアすれば生体に使えるのかが分からず、自前でハードルを設定することを繰り返したといいます。信州大学医学部医学科人工聴覚器学講座の宇佐美真一特任教授は、信州大学10ppm1ppm5ppm50ppm40ppm20ppm―埋込型・装着型デバイス共創コンソーシアム 第4回シンポジウム【成果報告会から】―た」(齋藤教授)。信州大学学術研究・産学官連携推進機構OPERA事務局の鳥山香織准教授は「11の研究課題の進歩を共有するために必要な秘密保持やプロジェクトに特化したデータ管理ルールなどを規約として企業と締結した。産学共創の体制そのものが1つのパッケージとなって他のプロジェクトでも展開していくことができる」と説明。ヒアリングを重ね、企業のデータ管理方法などを学びながらの枠組み作りを改めて振り返りました。AIの「教師データ」作り分野横断的なガイドライン必要に(鳥山准教授)「生理学的データ統合システム」では、ビッグデータをAI解析します。AIに解析のルールを学習させるための「教師データ」を作成する必要がありましたが、2017年の時点では医療分野のAI解析は一般的ではありませんでした。群馬大学数理データ科学教育研究センター長の浅尾高行氏とともに教師データ作成に携わった鳥山准教授は「手探りの状態で、軌道に乗るまで3年。学習精度が一定のレベルに達するまで時間がかかり大変だった」と話します。今後は教師データを作れる人材を増やす必要があると説明。医療機器開発では医療や工学、薬剤、ゲノムなど多様な言語が登場するため、多分野共通の用語のガイドラインを作成したと言います。プロジェクトにより研究開発が加速CO2を皮膚から計測(金子特別特任教授)バイタル測定をFBGセンサーで(児山助教)05鳥山 香織生理学的データ統合システムが拓く医療機器産業の未来。

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