2022年3月18日にオンライン開催した第4回シンポジウムでは、これらの研究成果を発表。「医療機器開発へのデータ利活用」をテーマにしたパネルディスカッションでは、医療機器の開発・利用に際するデジタルデータやIT技術活用の可能性を示し、安全な先進的医療機器を誰もが使用できる未来がすぐそこまで来ていることを広くアピールしました。信州大学は2016年から始まったOPERAプログラムの採択を目指してプロジェクトを発足。企業とのマッチングや人材集めの困難を乗り越えて2017年に採択され、研究開発をスタートしました。医療機器開発フェーズ開発前調査・FS課題02課題03課題04バイタルサイン組み込み型装着型デバイス研究課題05課題06薬事申請治験(臨床試験)設計前(非臨床試験)人工内耳電極の生体内安定性と薬剤徐放電極の開発および有効性に関する基礎的研究合併症が無く長期駆動安定な埋込型人工補助心臓の研究開発装着型超小型酸素濃縮器システム構築および使用者負担低減検証機能性細胞を用いた生体適合性担体の探索および製造システムに関する研究小型軽量・高効率・安全な弾性エネルギーストレージ材料の基礎研究監査製品販売(商品化)承認審査支援ツールボックスこのプロジェクトは、治療系医療機器を先導する企業や研究機関が「共創コンソーシアム」と呼ばれる共同体を形成し、オープンイノベーションでさまざまな医療機器の研究開発に取り組むもの。5年間の共同研究には計225人が参画。11の研究課題について論文122報、口頭発表197報、特許の出願・登録13件の成果を得ました。さまざまな知見や技術を集約したビックデータをAI解析する「生理学的データ統合システム」が開発されたことに加え、▽人工内耳▽装着型バイタルセンサー▽呼気・唾液センシングデバイス▽人工補助心臓など研究が加速し、信州大学発ベンチャー企業の2件の認定にもつながりました。生理学的データの統合で何がかわるのか?5年間で実用化にこぎつけた「生理学的信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所長学術研究院(保健学系)教授/卓越教授1988年信州大学医学部卒業。同医学部附属病院医員。1996年同医学部助手。1999年同医学部講師。2004年同教授。2014年より現職。データ統合システム」は、医療機器の研究開発から薬事審査、製造販売後の各フェーズに応じて企業や研究者による生体安全性情報の収集とリスク分析を支援する統合システム。共創コンソーシアムの研究開発過程で生まれた技術や材料、機器、部材などのデータを蓄積し、更に既存の各種埋込型・装着型デバイスのデータを集約しています。「キーワード検索」「承認審査支援」「患者レジストリ情報管理」の3つのツールにより、一体的に医療機器開発を支援する仕組み。集約したデータを広く共有臨床用語や専門用語を知らなくてもリスク分析に参照できる。安全情報を収集・加工し、AI学習させることで加速度的に情報の精度が向上する。03齋藤 直人―埋込型・装着型デバイス共創コンソーシアム 第4回シンポジウム【成果報告会から】―日本の医療機器開発を加速させ、医療分野への新規参入を促す生理学的データ統合システムが誕生!国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の公募事業「産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)」。このプログラムに採択された信州大学のプロジェクト「生理学的データ統合システムの構築による生体埋込型・装着型デバイス開発基盤の創出」には17企業8研究機関が参画し、2017年からオープンイノベーションによる先端医療機器の開発を進めてきました。プロジェクトの目的は、産学共同研究による国内の医療機器開発基盤を創出すること。11の研究課題に取り組みつつ、研究開発から実用化までの多様な情報を集約・AI解析し、体系化する医療機器開発支援ツール「生理学的データ統合システム」を開発。 プロジェクト研究開発課題一覧課題01国内の医療機器開発産業加速へ斬新な基盤づくり人工内耳や人工補助心臓など、体に埋め込んだり装着したりする医療機器の開発では、日本は欧米に遅れを取っており、このような治療系機器の国内市場は外国製品が5割を超える状況です。こうした中、産学連携に長く取り組んできた信州大学では、大学の研究力と企業の技術力を結集させ、国内の医療機器産業を底上げさせる必要があると考えました。生理学的データ統合システム医療機器の研究開発から薬事審査、製造販売後の各フェーズに応じて、3つのツールボックスにより生体安全情報の収集やリスク分析ができる。生理学的データ統合システムが拓く医療機器産業の未来。
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