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信州大学広報スタッフ会議広報アドバイザー朝日新聞社ソリューション・デザイン部川﨑 紀夫氏22年北京冬季五輪の開会式・閉会式で使用された国家体育場。その見た目から『鳥の巣』との愛称で、08年夏季五輪時にもメイン会場として使われた。北京五輪が閉幕した。小林陵侑選手がジャンプ・ノーマルヒル個人で金メダルを獲得したほか、パラ日本選手団主将の村岡桃佳選手はアルペンスキーで金メダルを複数獲得し、大いに盛り上がった。本学出身では一戸誠太郎選手がスピードスケート・マススタートで8位入賞。4大会連続出場の小平奈緒選手、初出場の小島良太選手はメダルにこそ手が届かなかったが、挑戦することを強く勇気づけられる滑りを見せてくれた。学生時代に白馬・野沢・志賀で年間100日以上滑っていたウインタースポーツ大好きの私は、今大会もありとあらゆる競技をテレビやインターネットで長時間観戦した。本当に面白かった。外部との接触を禁じる厳しいバブル方式でのコロナ封じ込め施策、ドーピング疑惑、ロシアによるウクライナ侵攻など、大会期間中にはさまざまなニュースが飛び交った。その中で注目したのはスノーボードのジュリア・マリノ選手(米国)に関する話題だ。マリノ選手はスロープスタイル決勝で難易度の高いエアを決めて銀メダルを獲得した。その技術はもちろん素晴らしかったが、より注目が集まったのは選手が使用した「プラダ」のスノーボードだった。スキー用具メーカーFactionとのパートナーシップで作られ、オンラインサイトでは46万7,500円で販売されていた。エアの最中もゴールエリアでもロゴがよく見えた。しかし、北京五輪のパートナー企業ではないプラダのロゴ露出に対し、IOC(国際オリンピック委員会)が強く指摘をした模様だ。続くビッグエア予選をマリノ選手は棄権。SNSでロゴを塗りつぶした板ではうまく滑れないとのコメントを発していた。当事者にしかわからないやりとりがあったはずなので、詳細はわからない。ただオリンピック憲章には「ルール40」という肖像権の使用規則があり、大会期間を含む前後40日間は出場選手を商業活動で使う場合に制限がかかる。パートナー企業ではない企業が便乗してマーケティング活動を行うことは「アンブッシュマーケティング」と呼ばれ、IOCは開催国に厳しく指導を要請している。前回の平昌五輪では、所属団体による壮行会やパブリックビューイングが自由に開催できないことが日本国内で話題となった。その後、東京五輪を経て一定の条件を満たせば所属企業の宣伝や非営利団体の報告会なども実施できることに変更されたが、いまだにところどころで問題が起きている。五輪を支えるパートナー企業の権利を守ること、選手を支えるスポンサー企業を守ること、そして根底にあるアマチュア競技者やファンの関心を高めること、これらを容易に満たすことは難しいと痛感した。合わせて年々競技人口が減っているウインタースポーツ界にとって本当に大事なことは何なのか、改めて大きな課題を突きつけられたように感じた。13信州大学は学外の広報有識者に広報アドバイザーとして、広報活動への助言・指導など、多彩な協力をいただいています。2002年朝日新聞社入社。広告局の外部営業、報道局記者、コンテンツプロデュース部などを経て、2015年中東に留学、2016年メディアビジネス局、2018年よりソリューション・デザイン部。 ⑭ウインタースポーツの未来は

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