理学部研究紹介2022
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微生物微生物 國頭 研究室牧田 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像國頭 恭 教授1998年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。とくに森林土壌において、炭素や窒素、リンの循環に関わる微生物の働きについて研究している。また重金属汚染についての研究も、学生時代から継続中。牧田 直樹 准教授大阪府茨木市生まれ。専門は森林生態学、土壌学。2008年神戸大学卒業、2013年京都大学修了(農学博士)。日本学術振興会特別研究員PD(森林総研、ヘルシンキ大学)、信州大学助教を経て、2022年より現職。私たちの身近に存在する土壌は、植物の生育を通して全ての陸上生物を養っているだけでなく、多様な元素の循環など、様々な機能を有しています。また近年では地球温暖化が大きな問題となり、土壌の炭素貯蔵にも関心がもたれています。土壌中には、細菌、糸状菌、微小藻類、原生動物、ウィルスといった肉眼では観察できない微生物が数多く生息しています。様々な微生物が、植物が光合成でつくった有機物を分解して無機物として放出することで、植物の再生産が可能となります。このように、微生物は生態系の物質循環にきわめて重要な働きを持っています。根っこや土の物質の動きを通して森林生態系のしくみを研究しています。国内では長野・京都・北海道の森林、国外ではマレーシア、フィンランド、アラスカ等の森林。熱帯から温帯・亜寒帯まで、スコップ片手に飛び回っています。植物の光合成によって獲得された炭素。いったい何処に行き、何処で使われるのでしょうか?樹木の骨格を作るために固定される炭素、呼吸活動で消費される炭素、共生相手である菌根菌に供給される炭素、根からの滲出物として土壌環境に放出される炭素。枯死して土壌へ還っていく炭素。炭素の動きを見ることにより、その植物の生き方や生活史がみえてきます。森の中の(特に根系の)炭素の行方、一緒に追いかけてみませんか!?林野庁、環境省、国土交通省、国立公園レンジャー地方公務員(環境・山林部)、環境コンサルティング製紙会社、建設会社(植林部門)、青年海外協力隊など。土壌中の物資循環における微生物の役割を明らかにすることは、陸上生態系を保全しそのサービス機能を維持する上で有用です。また近年深刻になっている環境問題に対応する際にも重要です。例えば、温暖化にともない微生物による土壌有機物分解と二酸化炭素放出が増加するのか否かという問題は、現在まで解明されていませんが、微生物がいずれの応答を示すかで、将来の気候変動にも大きな影響を与えます。研究により身につく論理性やプレゼンテーション能力は、文系、理系に拘わらず強力な武器となります。卒業生は、研究者や中学・高校の教員、分析会社といった理系の職種から、公務員などの文系の職種まで幅広い分野で活躍しています。森林生態系における炭素循環の解明から、植物、主に樹木根系の生存戦略を理解します。森林生態系における炭素の吸収・固定・放出を実測することにより地球温暖化抑制のための方策を探ります。樹木根の土壌崩壊や侵食を防ぐ働きを調べ、崩落土砂による民家への被害を防止、軽減する策を講じます。31有機物を微生物が分解することで、炭素や窒素、リンといった元素が循環し、微生物だけでなく他の生物にも利用できるようになる。採取した土壌を対象に、微生物実験や化学分析を行う。マレーシア熱帯雨林の根系採掘の調査風景大きな根っこも小さな根っこも人力で丁寧に掘り集めていく。フィンランド亜寒帯林の断面土壌中に存在する根系の形質や現存量・成長量・枯死量を測定し、植物の生き方や生活史を探る。1、植物の生存の仕組み2、森林の炭素貯蔵3、土砂災害の防止理学科物質循環学コース理学科物質循環学コース一握りの土の中にも無限の世界Going underground !          根系の謎を発掘

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