理学部研究紹介2022
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し球の現在・過去・未来齋藤 研究室森 研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像齋藤 武士 教授2004年 京都大学大学院修了、博士(人間・環境学)。JSPS特別研究員等を経て、2008年より信州大学。専門は火山学、岩石磁気学。森 宏 助教山口大学、名古屋大学大学院、産業技術総合研究所を経て、2016年より現職。研究分野は、構造地質学、変成岩岩石学、熱モデリング、ラマン分光分析。私は火山を研究しています。火山に出かけていって溶岩やガスを採ってきたり、火口で温度を測ったりしています。そうして測ったデータや、採ってきた試料を分析することで、昔そこでどんな噴火があったのか、現在どんな活動が起きているのか、これから先どんな活動が起こりそうかを探っています。火山は私たちの住んでいる地球の表面と内部をつなぐドアのようなものです。火山を研究することで、地球の中で今どんなことが起きているのか、かつてどんなことが起きたのか、今後地球がどうなっていくのかについて予想することができます。当研究室では学生の主体性を特に大事にしています。研究活動を通じて考える習慣と科学的な思考方法について、自分なりのやり方を掴めるように指導しており、それは卒業後も多いに役立つと考えています。最近の進路は、他大学の大学院への進学、地質・建設・資源・GISなどの民間企業、気象庁、教員などです。普段何気なく目にする岩石には、直接観察することが困難な地下深部の貴重な情報が記録されています。地下数km〜数十kmで形成された変成岩・堆積岩・断層岩などを対象として、野外や顕微鏡下といった様々なスケールでの観察に基づく地質構造解析とともに、ラマン分光分析装置などを使った岩石試料分析、さらにはコンピュータ上でのシミュレーションによる温度・圧力条件などの定量評価を行い、「岩石が地下深部からどのように上昇してきたのか?」、「現在の地球内部では何が起こっているのか?」といったことを地表に露出する岩石から探る研究に取り組んでいます。 系外惑星が観測されるようになった現在でも、生命が確認されているのは地球だけです。生命が存在するには液体の水が不可欠だと考えられていますが、原始的な生物は海嶺周辺の熱水噴出孔に生息しており、火山活動も大きな役割を果たしていたようです。熱いマグマと冷たい水の絶妙なバランスが大事だったのかもしれません。火山の研究から、地球外生命やハビタブルプラネットの探索につながっていくかもしれません。地震活動や火山活動は、地下深部での断層運動やマグマ発生に起因します。ただしこれら深部を直接観察することは出来ません。地表に露出する岩石は、かつて長期間にわたって地球内部(地下深部)で発生した現象の情報を記録しているため、岩石の研究は、深部の直接的な現象観察や長い時間を要する変形や熱の影響検証が可能であり、さらには将来起こりうる現象の長期予測にもつながります。研究では野外調査・分析など様々な手法を併用するとともに、他機関との交流も多くあります。これらの活動を通して、論理的な考え方、積極性、コミュニケーション能力などを養い、社会で幅広く活躍してもらいたいと考えています。222014年秋から活発に噴煙を上げている九州、阿蘇火山の中岳第1火口。噴火の様子を間近で観察することは、火山研究の醍醐味の一つである。北アルプス焼岳山頂の噴気観測。現在は静穏な焼岳だが、本当は…。今後の変化に注目して継続的な観測を行っている。野外で観察される数十mスケールの褶曲構造顕微鏡下で観察されるミクロスケールの微細褶曲構造理学科地球学コース理学科地球学コース火山からのぞく、    この地ほ岩石から読み解く地球内部の世界

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