常盤 研究室山田(昌)研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来研究から広がる未来卒業後の未来像卒業後の未来像常盤 哲也 准教授名古屋大学大学院、日本原子力研究開発機構、信州大学助教を経て、2019年より現職。博士(理学)。研究分野は、付加体地質学、構造地質学、応用地質学。山田 昌樹 助教2017年筑波大学大学院博士後期課程修了。東京大学地震研究所特任研究員を経て、2019年より現職。専門分野は、堆積学、自然災害科学。日本列島は、複数のプレートがひしめき合うプレート収束帯に位置しており、海洋プレートの沈み込みによってプレートの一部やプレート上の堆積物が大陸プレート側に付加して形成された“付加体”と呼ばれる地質体が広く分布しています。この付加体は、現在に至るまでに様々な変形を被っており、複雑な地質構造が存在します。私の研究室では、その地質構造のパターンや形成の順番などをひも解くことで、過去のプレートの沈み込み方向や、それに伴う付加体の形成プロセスを解明し、日本列島がどのように作られていったのかということを明らかにする研究を行っています。巨大津波は海底や海浜の砂礫を内陸へと運搬します。これを津波堆積物と呼びます。国内外の沿岸地域で掘削調査を実施し、地層中に残された過去の巨大津波の痕跡(津波堆積物)を見つけ、過去の巨大地震・津波の履歴を解明する研究を行っています。地層中で正確に津波堆積物を識別することは簡単ではありません。そのため、堆積学的検討に加えて、地球化学分析や微化石分析なども駆使しています。また、洪水や台風時のストームによって形成される堆積物の研究も行い、地層中でのイベント堆積物(津波や洪水、ストームで形成される堆積物)の識別基準の確立を目指しています。最近は、コンピューターを用いた津波のシミュレーションや津波堆積物の情報(層厚や粒径)からそれを堆積させた津波の水理量(流速や高さ)を逆解析する研究にも取り組んでいます。巨大津波は甚大な被害をもたらします。将来発生し得る地震・津波に備えるため、過去にどのようなイベントが起こったのかを知ることはとても重要です。右下の写真のように沿岸の低地や湖沼の地層を調査することで、古文書などの歴史記録では知り得ない過去数千年前まで遡って地震・津波の履歴を解明することができます。このような地質調査によって過去の地震・津波の規模や発生間隔を明らかにすることで、将来発生し得る地震規模の評価や津波ハザードマップの作成に貢献しています。私の研究室が研究対象としている付加体は、日本列島の骨格であり基盤ともいえます。よって、付加体の形成過程を解明していくことは、日本列島の生い立ちを理解する上でとても重要なことです。また、地すべりや崩落などの災害をより理解する上でも、基盤の状態を把握することは必要不可欠です。加えて、付加体が作られているところは、巨大地震が発生するところであり、地震がどのようなプロセスで起こっているのかという地震の理解にもつながっていきます。研究では、野外調査に重点を置いており、科学的視点や論理的思考能力を磨く指導を行っています。また、国内外の学会等で成果を発表することにより、プレゼンテーション能力やコミュニケーション能力を磨き、社会で幅広く活躍してもらいたいと考えています。研究活動をする中で、物事を論理的に考え、広い視野を持って自然現象を探求ようになってほしいと考えています。また、自分の考えを分かりやすく相手に伝えるスキルの習得にも力を入れています。研究業界のみならず、社会で幅広く活躍できるような人材の育成を目指しています。21右ずれの変形構造。この構造から過去のプレートの沈み込み方向が推定できる。流動的変形構造。岩石になる前に液状化が起こっていたことを物語っている。2011年東北地方太平洋沖地震津波によって千葉県旭市の沿岸低地に形成された津波堆積物。別府湾沿岸地域における掘削調査の様子と堆積物コアに認められた約2000年前の津波堆積物。理学科地球学コース理学科地球学コース付加体に認められる地質構造から 日本列島の形成過程をひも解く地層から読み解く過去の巨大津波
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