理学部研究紹介2022
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吉田 研究室山田(桂)研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像吉田 孝紀 教授岩手県生まれ、北海道大学大学院修了、1998年信州大学理学部地質科学科助手、2016年より現職。研究分野は層位学、堆積学、堆積岩岩石学。山田 桂 教授日本学術振興会特別研究員、信州大学助教、講師、准教授を経て、2019年から現職。研究分野は古生物学、古環境復元ヒマラヤのような巨大山脈の形成は、大気や海水の循環、降水量や季節性の変化などによって、地球環境に大きな影響を与えています。私たちは数億年前から現在までの時間スケールと、身近な地域からグローバルまでの空間スケールの両面において、巨大な山脈が与えた環境変化の解明に取り組んでいます。例えば、ヒマラヤ形成におけるもっとも初期の堆積物はインド洋の海底に堆積していますが、これまでその調査・研究はなされていませんでした。現在、インド洋の海底から採集された堆積物を検討して、ヒマラヤの上昇時期の特定やモンスーン循環の出現時期の特定を検討しています。また、ヒマラヤ周辺やアラビア半島周辺の堆積物の調査を行い、ヒマラヤ形成以前と以後の環境変化の研究も進めています。映画や漫画の世界に登場するタイムマシンは、まだ実在しません。でも、それがなくても私たちはすでに過去を知る方法を見つけています。タイムマシンの代わりになるすごいもの、それが「化石」です。地層の中に含まれている小さな化石を調べると、人間がまだ地球上にいなかった遥か昔の地球の様子まで知ることができます。私が今注目しているテーマは、日本列島の気候に大きな影響を与えるモンスーン変動です。そのために、小さな化石を使って、縄文時代以降の人々が過ごした日本周辺の降水量や風の強さなどを調べています。巨大山脈形成は地球の歴史において何度も繰り返されてきました。その都度、地球環境の大きな変革が生じ、生物進化を促してきたと考えられています。私たちの手法はフィールドワークによって堆積物を地道に調べるといった地味な方法が主体ですが、岩石化学や土壌学、放射年代学などの多くの手法も併用しています。現在の地球環境がどのようなプロセスで作られ、どのように維持されているのかを解き明かし、将来起こりえる地球環境変化を具体化したいと思います。研究で培ったデータや観察事実に基づいた思考力・問題発見力は、社会でも非常に強力な武器となります。卒業後は、研究者としての道を選んだり、民間企業の専門技術者や公務員として活躍しています。最近の研究では、寒冷化などの気候が悪化した時期に王朝が滅びるなど、文明の発展に気候変動が影響を与えていたことが明らかになっています。そのため、人間社会の発展のためにも、将来の気候変動を予測することが重要です。私たちの研究で過去の地球の様子やその変動メカニズムを明らかにできれば、この先地球がどのように変わっていくのかを予測する材料にすることができます。地質学の知識は、多分野で必要とされています。そのため、建設業界や環境コンサルタント、資源開発の仕事に就く学生が多いようです。また、博物館学芸員、公務員、教員や新聞記者などになって、地質学の普及に務める学生もいます。20ヒマラヤ奥地でのフィールドワーク。調査地までの急峻な山道をひたすら登る。オマーン山脈南部での地質調査。2億年前の石灰岩の中からストロマトライトを探すために岩石砂漠をさまよう。地層から取り出した貝形虫殻の写真。殻はこのようなスライドに種類ごとに分けて並べる。マス目の一辺は3.5mmなので大きさが分かる。湖沼でとった湖底堆積物の柱状試料。目では見えないが、この中に小さな化石がたくさん含まれている。理学科地球学コース理学科地球学コース「タイムマシン」よりすごい、小さな化石堆積物から解き明かす山岳形成と       グローバル環境の変遷

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