理学部研究紹介2022
23/40

二村研究室研究から広がる未来卒業後の未来像二村 竜祐 助教2012年3月信州大学総合工学系研究科博士課程修了後、信州大学エキゾチックナノカーボン研究拠点、環境・エネルギー材料科学研究所 博士研究員、特任助教(2018年度)を経て2019年4月より現職。専門分野は『ナノ空間科学』。皆さん「ナノ」という言葉は聞いたことがあるかもしれません。「ナノ」は科学から一般に浸透した言葉で、10-9 (= 0.000000001; 0が9つ並ぶ)を表し、物理単位と一緒に出てきます。我々人間にとって1nm(ナノメートル)は目では捉えることができないほど、非常に小さな大きさですが、化学の主役である分子たちにとって1ナノメートルは自分たちの大きさより少し大きなサイズになります。私たちはナノメートルサイズの空間に閉じ込められた分子集団の振る舞いについてX線散乱測定などから研究をしています。最近の私たちの研究では「塩」の一種であるイオン液体をナノ空間に閉じ込めることで非常に興味深いことがわかってきました。ナノ空間ではマイナスのイオンの周りにマイナスのイオンが近づけるのですから、いかにナノ空間が特殊な空間であるかということがわかるかと思います。このように、研究では一見すると常識とは矛盾しそうな現象が起こり我々科学者の頭を悩ませますが、なぜそのようなことが起こるのかを突き詰めて考えて理解するのが科学の醍醐味だと思います。我々の目標として、ナノ空間を有している「多孔性材料」と「吸着した分子集団」が合わさることで初めて生じる新たな機能を有効に利用することを目指しています。例えば、カーボンナノチューブの有するナノ空間を利用すれば、分子集団を円筒形にそろえることができ、通常では現れない機能の発現が期待できます。そのためには、どんな機能が期待できるのか、また多孔性材料そして吸着分子の種類などをよく考えて研究をスタートさせる必要があります。さらに、ナノ空間で吸着分子がどんな構造になるのか理解も必要でしょう。我々の研究はまだスタートしたばかりです。コンピュータプログラミング、工学機器を用いた装置製作、装置の作図及び3Dプリンターを用いた治具の作成などは研究でよく行います。ですので、学生たちは研究生活でこれらのスキルを身に付けていきます。これらを含め、化学系企業、装置メーカーなどの研究員を目指す学生を応援いたします。19カーボンナノ空間では、プラスのイオンとマイナスのイオンからなるイオン液体のクーロン力による秩序構造が一部崩れた!(a)電場を印加した時のスーパーキャパシタ内部における分子集団の構造変化を捉えた(a)電場印加によるマイナスイオン周りの第一配位圏の各イオンの割合の変化(b)作成したin-situ X線散乱セル写真は論文(Nature Materials, doi: 10.1038/nmat4974)のプレスリリース会見の様子。(信州大学HP)右から2番目が二村竜祐助教(b)理学科化学コースナノ空間と吸着分子で作る新しいナノ材料

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る