理学部研究紹介2022
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光物性研究室光物性研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来卒業後の未来像宮丸 文章 教授主な研究分野:テラヘルツ電磁波工学。人工構造物を用いた電磁波の制御素子に関する研究。キーワード:テラヘルツ波メタマテリアル髙野 恵介 助教大阪大学工学研究科 精密科学・応用物理学専攻終了。博士(工学)。テラヘルツ波科学とメタマテリアルが専門。テラヘルツ波と電磁波領域を制御する研究を行っています。テラヘルツ波とは電磁波のある周波数領域です。この周波数領域は、これまで研究開発が立ち遅れていました。なぜなら、十分に強い光源を得るのが難しかったからです。しかし、ここ十数年の間にテラヘルツ技術は急速に発展し、いまや産業応用へ向かいつつあります。本研究室では、テラヘルツ波を制御する新しい光学素子の研究を行っています。特に、メタマテリアルと呼ばれる人工構造物を作製することによって、これまでになかった光学特性を持つ光学素子を実現する研究を行っています。スマートフォンが通信する電波や、リモコンの赤外線、目に見える可視光、レントゲンのX線など、呼び名は違いますが、これらは全て空間を伝わる電気と磁気の波である電磁波です。自然界の物質はそれぞれを構成する原子や分子の性質によって、いろいろな周波数で振動する電磁波に対して様々な応答を示します。一方で、電磁波の波長よりも小さい構造を物質に人工的に作ってやれば、新たに電磁波応答を付け加えることもできます。そのような人工構造で自由度高く電磁波応答を設計した物質のことをメタマテリアルと呼びます。メタマテリアルで生じる新しい電磁現象の発見や、これまでにあまり使われてこなかったテラヘルツの周波数帯の超高周波電磁波を操る新しい技術を目指した研究を行っています。テラヘルツ電磁波は他の電磁波には無い光学特性があり、それを利用した応用技術というものが考えられてきています。たとえば、可視光とは異なり、紙や陶器などの物質を素通りします。一方、薬品やプラスチックなどにはある特異な吸収特性を示します。このようなテラヘルツ電磁波の特性は、さまざまな産業分野へ応用されていくと考えられます。本研究室では、レーザーを用いた光学系を構築し、それらをコンピュータ制御するプログラムを作成するなど、測定装置を自ら作製します。それらの基盤的な技術を身に着けた学生は、光学機器メーカーや電気・精密機器メーカーなどで、研究開発業務に従事することが多いです。メタマテリアルは、光・電磁波のあるところどこにでも応用可能性があります。ほとんど厚さがないカメラや、超高速な無線通信でテレビ裏の配線がスッキリなくなるといった未来技術に使えるかもしれません。そこには、まるでプリンタで印刷するように簡単に作られた望みの電磁波応答を持つメタマテリアルが使われている、という未来を夢見ています。まずは研究に関連している、光デバイス、光・電磁波計測や通信など、光や電磁波を扱う分野へ視野が広がります。見えるものが増えたら、それまでに学んだことをてこにして自由自在な自分の未来をこじ開けて欲しいと思います。13テラヘルツ分光装置を構築している様子。自分たちで測定装置を構築する。テラヘルツ波を制御する人工構造物(メタマテリアル)。数ミクロンの微細加工を行い、メタマテリアルを作製する。京都、東福寺の庭園にある市松模様。古くから親しまれたこの模様も電磁波の応答をデザインするために利用できる。微細加工で作製した金薄膜の市松模様。理想的な市松模様に構造を近づけていくと、急に電磁波を吸収し始める。理学科物理学コース理学科物理学コースかたちで電磁波をあやつるテラヘルツ電磁波を制御する

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