医学部医学科研究案内2022_日本語
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術中MRIを有する当院の次世代手術室「スマート治療室」覚醒下手術(脳機能温存を確認しながら腫瘍摘出を進める。患者さんはモニターを見ながら質問に答える。摘出の範囲はナビゲーションで確認する)頭蓋内電極を留置し(左)、頭蓋内脳波でてんかん発作が始まる焦点を詳細に確認(右)。その後焦点切除術を検討する。迷走神経刺激療法によりてんかん発作抑制を図ることもある(LivaNova HPより改変) 頭蓋内電極頭蓋内脳波てんかん発作を感知して脳刺激を行う刺激装置(responsive neurostimulation (RNS))が海外では使用されている(NeuroPace HPより)・術中電気生理モニタリング、マッピング・覚醒下手術・手術支援装置、手術器具の開発研究から広がる未来神経の障害の程度を術中に判断する技術と、より正確に安全に手術操作できる技術が、機能温存下での最大限の摘出を可能にし、治療成績を向上させます。信州大学病院では、この理念を実現するための術中MRIと、手術支援装置の作動状況を統合する次世代手術室(スマート治療室)が2018年から稼働しています。医学部卒業後、2年間の臨床研修プログラム終了後、脳神経外科を選択します。4年間の後期臨床研修プログラム終了後、脳神経外科専門医を取得します。その後自身のサブスペシャリティとして脳腫瘍を選択します。・脳機能やてんかんの解明・てんかんの外科治療・包括的なてんかん診療の構築研究から広がる未来てんかん外科には画像には映らない脳の機能、つまり脳波をきちんと解析することが必要です。詳細な脳機能解析のためには脳から直接脳波を調べて解析しますが、この脳機能解析が進めば人間の心までもわかる時代が来るかもしれません。脳波や脳機能だけでなく、てんかんという病気もまだまだわからないことが多く、今後も臨床や研究で発展していく分野です。直接見ることのできない“てんかん”という病気を可視化して手術治療を行うことができるのが脳神経外科医が行うてんかん治療です。てんかんを外科治療で治癒させることが出来た時には感動と大きな喜びを感じることと思います。脳腫瘍のうち脳そのものに発生する腫瘍を髄内腫瘍と呼んでいます。髄内腫瘍は、様々な機能を司る脳そのものに浸潤して大きくなる特徴があります。主な治療方法は摘出とそれに引き続く放射線治療、化学療法ですが、治療で最も重要になるのは摘出率です。腫瘍を、脳との境界ぎりぎりまで摘出しようとすると、周囲の脳損傷が起きる可能性があります。術後の神経障害を生じさせない範囲で最大限の摘出を行うことが求められます。 てんかんとは脳の一部の神経細胞が異常発火し、それが脳の一部あるいは全体に伝播することにより引き起こされる一過性の発作が反復する疾患です。てんかんは乳幼児から成人・老年に至る全年齢層に及ぶ神経疾患で有病率が約1%と言われています。てんかん治療には抗てんかん薬の薬物治療が基本ですが、てんかん患者の約3割は薬剤治療が奏功しない薬剤治療抵抗性てんかんです。コントロール不良な発作により日常生活での制限や、怪我、原因不明の突然死などのリスクがあります。そんなてんかん患者さんの生活と命を守るために“てんかん外科手術”があります。31主な研究テーマ卒業後の未来像主な研究テーマ卒業後の未来像(チーフ:准教授 荻原利浩)(チーフ:准教授 荻原利浩)髄内腫瘍 班髄内腫瘍 班脳神経外科学脳神経外科学てんかん外科 班てんかん外科 班(チーフ:講師 金谷康平)(チーフ:講師 金谷康平)最先端の脳神経外科技術を集めて治療に取り組んでいますてんかん外科は、てんかん患者さんの生活と命を守る大切な治療です

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