医学部医学科研究案内2022_日本語
12/48

図1. フローサイトメトリー技術によって免疫細胞集団を分別して解析(マウス脾臓のデータ、黄色:好中球、水色:単球、緑色:マクロファージ、桃色:樹状細胞)図2. ある遺伝子を人為的に破壊した変異マウスの腸管上皮層内のTリンパ球集団(黄色:TCRαβ型T細胞、水色: TCRγδ型T細胞)。右の変異マウスでは、TCRαβ型T細胞が消失している転移前の肺における透過性亢進部位の形成 後に癌はこの部位に転移する ヒトの肺でもこのメカニズムが存在する可能性がある担癌マウスの肺における血管透過性亢進部位が“転移前の土壌”である。野生型マウス変異マウス・免疫細胞の遺伝子をタイミング良くスイッチオン・オフする転写因子の研究・免疫細胞の機能を発揮させるためのいろいろな信号を細胞の中でやりとりする「シ免疫学の基礎をしっかりと身につけ、医療の世界に進んだ後にも、なぜ?どうして?と問い続ける姿勢を身につけた医師を目指してほしいと考えています。・正常細胞ががん化する仕組みの解析・がんが転移する仕組みの解析・がん転移を抑制する抗転移細胞の解析研究から広がる未来がんの転移の予防や治療を考えたとき、現在では体に負担のかかる抗がん剤治療が一般的です。私たちがマウスで発見した抗転移細胞は自身が元々持っている細胞であり、転移するがん細胞をたたくなどして転移を防ぎます。これが、ヒトでも確認され、さらに活性のある状態で安定供給できるようになると、がんの治療に大きな革命をもたらします。がんの研究を通し、医療をはじめとした様々な知見を深め、治療、教育、行政や研究といった多種多様な分野での活躍が望めます。日々健康に生活する上で欠かせないのが、私たちの身体が備える「免疫」というしくみです。免疫はちょうど良い程度に働く必要があります。実際にその反応が弱ければ感染症や癌にかかりやすくなりますし、逆に強すぎてもアレルギーや自己免疫疾患といった病気につながります。私たちの研究室では、免疫の仕組みを理解するため、免疫の働きを担ういろいろな細胞が生まれてくる仕組み、正しく働くための調節の仕組みの研究を行っています。こういう研究は、様々な疾病のより良い予防や治療に繋がる可能性があります。私たちは、がんの治癒を目指し、哺乳類(マウス-ヒト)のがんの発生、増殖、転移に焦点を当てて研究をしています。現在までに、がんが転移する前、離れた他の臓器の局所に“転移予定地”を形成すること、それを抑える抗転移細胞が存在することを、マウスを用いた研究で明らかにしてきました。その中で細胞外核酸が抗転移細胞を活性化するという新たな概念を見出しました。しかしながらその詳細な仕組みや、それが“人”においても存在するのかは明らかになっていません。これらのことを追求するため、さらに研究を進めています。がん転移の予測や予防的な治療法の確立につながることが期待され、大変やりがいのある研究です。グナル伝達分子」の研究研究から広がる未来いま免疫学の世界では、がんやリウマチを代表とする免疫疾患の新しい治療法が次々と生みだされています。また、免疫系と私たちの腸や皮膚に共生する細菌との相互作用と健康の関係も大きな話題になっています。免疫のより良い理解は、病気の診断、治療の進歩だけでなく、人間が健康を保つ手段にもヒントをもたらしてくれます。Ly6CLy6GF4/80TCRTCRCD8CD11cTCRTCRCD810主な研究テーマ卒業後の未来像主な研究テーマ卒業後の未来像(バイオメディカル研究所)免疫制御学(教授 瀧 伸介)分子医化学(教授 平塚佐千枝)免疫の仕組みは、どうやって作られ、正しくはたらくのか転移するがんを狙い撃つ

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る