2022信大環境報告書
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 今回の環境報告書で注目するのは、地球温暖化防止に向けた信州大学の取組みの実装化です。貴学はこれまでも地域と密着した取組みに力を注いできましたが、今や待ったなしの脱炭素(カーボン・オフセット、カーボンニュートラル、ゼロカーボン)社会の実現を目指す具体的な取組みが、自治体や政府の政策形成支援というカタチで現われています。特に、松本市と共同申請し、環境省による「脱炭素先行地域」に選定された乗鞍高原「ゼロカーボンパーク」の取組みにおいて、環境配慮型二次交通の構築、木材加工や供給を行う地域ビジネスの事業化は、脱炭素地域づくりの優良モデルと言えます。そして、地域性と事業性を両立したエネルギー自立地域の形成を促進する事業の展開を主導、支援することを目的として、貴学が中核を担い設立した産学官連携組織のコンソーシアムに期待がかかります。脱炭素社会を目指す上で欠かせない再生可能エネルギーの推進には、設備導入に際して地域社会では様々な問題をひき起こしますが、研究者として教員らがローカルとグローバル、そして人文科学と自然科学の両分野から総合的な問題の解決に専門的見地から関わるという貴学ならでの強みを活かしていることは評価できます。 人材育成として、学内では2019年度より新設された全学横断特別教育プログラムである環境マインド実践人材養成コースにおいて脱炭素社会実現のためのリテラシーを身につける授業が認定科目として多数提供されていることは興味深いものです。その長所を活かし、社会に求められるテーマでモデルカリキュラムを示すことも学部横断型コースの魅力の発信に繫がるのではと期待します。また、地域においては脱炭素社会の人材育成として、環境省の「地域再エネ事業の持続性向上のための地域中核人材育成事業」に取組み、地域の民間企業や行政機関を対象としたワークショップ、そして個別の実践トレーニングの機会を組み合わ環境報告書2022表紙イラスト等募集にご応募いただきありがとうございました。惜しくも表紙イラストには採用されませんでしたが、佳作作品をここで紹介させていただきます。せた人材育成プログラムを構築していることは、注目に値します。地域に根ざす異業種の事業者が相互理解と連携を推し進めることによって、事業活動と地域社会の双方に利益をもたらすネットワークづくりに繋げていることは全国的にも評価されており、貴学ならではの教育研究と社会連携の成果といえるでしょう。このような実践による知見を踏まえ、今後、知識や技術の習得に留まらない、学びの主体者である学生や地域の皆さんの脱炭素社会に向けた行動変容をもたらす効果的な学習プロセスやその内容の構造化、そして学習によってもたらされる効力感等の評価の構築に繫がることを期待します。 各キャンパスにおける環境学生委員会の活動が活発なことも高く評価できます。長野県内各所に主要5キャンパスが分散している状況にもかかわらず、「環境マネジメント全国学生大会」や「エコプロ」といった全国的なイベントには、キャンパスの枠を超えた一体感をもって取組み、全国の大学と積極的に情報交換し研鑽を積む姿が印象的です。2018年9月貴学の上田キャンパスで開催された第12回環境マネジメント全国学生大会に、琉球大学のエコロジカル・キャンパス学生委員会のメンバーと参加しましたが、主催大学として環境学生委員会の皆さんのスムーズな運営に見られた結束力、そして温かいおもてなしには非常に好感が持てました。 信州大学は、国公立大学の中で初のISO14001認証を取得し、長年の活動によって培われた豊富な経験の自立化から独自の環境マネジメントシステムを構築したことは全国の大学のモデルとなっております。今後も信州の地で脱炭素社会の技術開発、人材育成を先導していく地域に根ざした大学のパイオニアとして、その活躍に期待いたします。佳作作品:野本 温秀さん(総合理工学研究科 工学専攻 水環境・土木工学分野)琉球大学国際地域創造学部 准教授琉球大学環境・施設マネジメント委員会エコロジカル・マネジメント専門部会長 大島順子35第三者からのご意見応募作品紹介

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