保健学科 研究紹介2022
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札幌医科大学卒業。群馬大学大学院(保健学修士)、筑波大学大学院(ヒューマン・ケア科学博士)修了。看護師として勤務後、目白大学、首都大学東京を経て、2019年に着任。 昭和62年に信州大学に来てから、消化器外科、中でも肝臓移植の臨床を中心に研究してきました。大学生の頃、外科の大教授から「あと20~30年もするとおそらくガンに対する手術療法は減って、薬による治療に変わるだろう。そのあとに残る外科は、先天性の奇形、交通事故などによる外傷、そして臓器移植だ。」とおっしゃられたのを聞いて移植に興味は持ちましたが、信州大学に来て実際に肝臓移植に携わるようになるとは思いもよりませんでした。一方で、卒後35年経ちましたが、癌に対する最も効果的な治療法は相変わらず手術であり大教授の予想は外れました。今は診察と共に学生教育などに従事しています。 何かはまっていることはありますか? それによって、人との約束を守れなくなったり、やらなくてはいけないことができなくなったりしていませんか? アディクション(嗜癖、いわゆる依存症)とは、本人・家族の生活をおびやかしているにも関わらず止めることのできない、不健康にのめりこんだ・はまった・とらわれた習慣です。つまり「やめたいのにやめられない」状態のことで、よく知られているものにアルコールや薬物、ギャンブルがあります。私は、予防的な視点から、これらの嗜癖行動を開始してからどのように問題が深刻になっていくのか、また、それには何が影響するのかを研究しています。池上 俊彦 教授昭和53年上田高校卒業昭和59年東北大学卒業昭和59年岩手県立中央病院昭和62年信州大学外科市立大町総合病院、松代総合病院、国立長野病院勤務平成27年医学部保健学科新井 清美 教授生体肝移植の一コマ。患者さんの肝臓は摘出し、提供者からもらっていた肝臓の動脈を顕微鏡を使って縫っている。グリーンリボンは世界的な移植医療のシンボルギャンブル障害を持つ本人と家族の認識のプロセス研修会や講習会の様子出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)、平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業、2016年地域包括ケアシステムの概念を示す鉢植え問題のある飲酒をしている方の推計ギャンブルに問題を持つ方の推計―7―研究から広がる未来 医療の分野では直接患者さんの病気の治療に役立つことから、広く地域の患者さん、世の中の人の健康に関することまで、それこそミクロからマクロまでいろいろなところで、様々な関わりを持つことができます。そんな中で、常に疑問を持つことを忘れず、そしてその解決法が何かないか考えていると、いつかその答えが得られると思います。卒業後の未来像 看護学専攻を卒業して、病院の看護師として、訪問看護師として、地域の保健師として働いていく中で、常に、どうしてだろう、どうしたらもっといいんだろうと、考えていると、今とは違う方法、もっといい方法が見つかると思います。研究から広がる未来 アディクションは身近なところに1人はいても不思議ではない、ありふれた病気です。この問題を持つ方は多くの場合、地域で生活を送っていますが、医療現場では内科や外科や救急等でお会いすることも珍しくありません。実は、引退後のアスリートにもこのリスクがあるといわれています。何がリスクになり、問題となっていくのかがわかれば、アディクションや関連する問題の予防につなげることができるのです。卒業後の未来像 卒業後は医療機関や地域、企業等、活躍の場は多様です。たくさん考えながら働いているうちに、多くの疑問を持つかもしれません。そんな時には大学院に進学し、探究していきましょう。成人看護学成人看護学看護学専攻成人・老年看護学領域看護学専攻成人・老年看護学領域何でだろう、どうしてだろうどうしたらもっと楽になれるだろう「やめたいのにやめられない」生きにくさを探り、生きやすさへと応用する

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