保健学科 研究紹介2022
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信州大学にて博士(保健学)を取得。信州大学助手を経て、2016年より現職。専門は身体障害系の作業療法。特に、脳卒中患者の精神機能や日常生活の支援に関する研究を行っている。2016年、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座地域リハビリテーション学分野修了(医学博士・作業療法士)2016年、本校に着任 脳卒中や筋萎縮性側索硬化症といった脳や神経が侵される病気になると、手足が麻痺したり、筋肉が徐々に動かなくなるため、今まで当たり前にできていた生活がうまくできなくなります。私たちの研究室では、そのような人たちが再び生活を再構築していくよりよい方法について研究しています。①日常生活の動作を計測機器を用いて解析し、少ない力でも効率よく行える動作や福祉用具・居住環境について検討する。②腕や指に生じた麻痺をより回復させるための末梢神経電気刺激と作業療法を併用させた治療方法の効果を検証する。③地域で生活されている心身に障害のある高齢者が「自分らしい生活」を獲得できるようにするための支援方法を検討するなどです。 近年、神経科学の発展により作業療法分野においても様々な神経リハビリテーションが開発されています。佐賀里研究室では、主に近赤外分光法などの脳機能イメージング装置を用いた作業療法研究を行っています。作業療法では、そのものがセラピーになるのですが、この装置を使用すると生活行為中の脳活動をタイムリーに可視化することができます。最近では、簡便かつ効果的に前頭前野を賦活させる運動課題の探索や実車運転中のドライバーの生体反応(発汗学)について研究しています。このほかでは、がん作業療法の研究・教育・臨床に従事しております。①日常生活の動作の解析起き上がり動作(左)や箸動作(右)の筋肉や関節の動きを計測機器を用いて解析している②末梢神経電気刺激装置腕の末梢神経に電気刺激を与えることで運動神経を活性化させ、手や腕のリハビリを実施することで機能回復を図る近赤外分光法を用いた実験のイメージ前頭前野の賦活によって認知機能の維持向上を狙った運動課題③その人らしい生活の再構築訪問リハビリテーションにて、その人にとって意味のある大切な作業を再獲得できるような支援を実施する実車運転時の生体反応を計測している実験(発汗学)―32―務台 均 准教授佐賀里 昭 准教授研究から広がる未来 私たちの研究によって、からだに障害を持った人たちが、生活しやすい動作や居住環境を獲得することができるようになったり、より手足の麻痺を回復させることができるようになったり、便利な道具をうまく使いこなして生活がし易くなったりします。そして、今よりもっと、その人らしく、より楽しく、生き生きとした生活が過ごせるような支援を創造していきます。卒業後の未来像 卒業生の多くは病院や施設の作業療法士として、患者の生活の再獲得や社会復帰を支援する仕事に携わっています。また、大学院に進学し、最先端医療や作業療法の研究を行っている卒業生もいます。作業療法士として働きながらの社会人大学院生も可能です。研究から広がる未来 生活行為中の生体反応を客観的に捉えることで、効果的な作業療法の開発に寄与することができます。一般に基礎的研究は応用されるまでに時間がかかるといわれていますが、私自身が作業療法士であり、実践するフィールドを有するため、橋渡しに時間を要しません。基礎的研究と臨床作業療法をつなぐトランスレーショナルリサーチによって作業療法の可能性を飛躍させることができます。卒業後の未来像 作業療法にはMeaningful Occupation(意味のある作業)という言葉があります。自身にとって価値のある作業(活動)に従事することで、幸せを感じることは一般に理解されていることですが、それをがん作業療法領域の臨床研究や生体反応指標を用いた基礎的研究を通して検証していくことによって、盤石な基盤に基づく作業療法を展開していくための一助にしていきます。基礎作業療法学基礎作業療法学作業療法学専攻からだに障害があっても作業療法学専攻変幻自在な作業療法の有効性を自分らしく生きていく方法を考えていく示すためのトランスレーショナルリサーチ

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