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58MESSAGES from GRADUATESきっかけは、どこにあるかわからない 在学時、私は芸術コミュニケーション分野に所属していました。ここでは、美術・音楽・身体表現といった芸術の諸分野で、社会との関係性について実践的かつ領域横断的に学びます。 新型コロナウイルス感染症の影響により、3年次の講義はほとんどがオンラインで行われました。この時期の講義でとったノートのなかに、いまでも印象的な一文が残っています。 「芸術がコミュニケーション(伝達手段)であるというよりも、芸術とともに/によってコミュニケーションがひらかれる」 この言葉は、外出制限により社会と断絶していた当時の私にとって、ある種の救いになりました。漠然と「コミュニケーションの起点となる芸術を社会に接続する役割を担っていきたい」と考えるようになり、現在従事している行政職を志望する一つのきっかけになったのです。 いつかはかならず自分の進む道を選択しなければなりませんが、きっかけはどこにあるかわからないものです。信州大学人文学部では全7コースの学問分野を、すそ野をひろげて学ぶことができます。はじめは興味がなくとも、次第に深みへはまっていくことも少なからずあるかもしれません。ひろく深く学ぶことができるこの環境で、きっかけを探してみてください。 私は在学時、比較文学分野というところで学んでいましたが、「分野」という概念は解体されるそうで、だんだんと過去がしっかり過去になってゆくのだな、という感慨があります。私が過ごした時間はすでに過去のものですから、そこから個人的な体験を語っても、それはすでに、あまり読む方の役には立たない情報になっているかもしれません。 「学部を卒業した後の人生どうしようかな」ということを考えるにあたり、自分の心の内を言語化する力がまずは必要だと思います。つまり、何が好きで、何が嫌いで、許容できるもののラインはどこで……ということですね。そういったことを考える際、人文学部で養われる力はきっと助けになることと思います。でも、そうでなくてもいいと思います。20歳前後で何か人生のすべてが決まってしまうわけではきっとないですし、偉そうにこの文章を書いている私も、読んでいる皆さんといくつも違いません。この先何を選んでも、どうせいつかは何か後悔すると思うので、せめて自分で選んだということには納得できるといいと思います。選ぶということは考えるということですから、やっぱりいくらか、人文学部で考えることは助けになるでしょうか。 入学された方にも、ここを読んだけど入学はしなかった方にも、どうか行く先に幸が多くありますように。跡部凜花2022年卒業軽井沢町役場折井大哲2021年卒業丸善出版株式会社卒業後の将来を考えるにあたり、まず自分の心の内を言語化する力が必要。

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