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41 最初は上代文学をやりたいって思ってたんです。それが大学2年生でプレゼミみたいな授業を選択するとき、先輩からこの授業面白いよって勧められて履修した授業の先生が近世文学のご専門で、その授業で読んだのが井原西鶴の浮世草子。木版本で奥付があり、版元名が印刷されています。そこで先生にこの出版元ってどういう人なんですか?って尋ねたら「調査されていなくてまだ判っていない」という返事がかえってきて。西鶴浮世草子は、近世文学の中では最も盛んに研究されている領域の一つなんです。ところが、その人の本を出版した版元がどういう人か判ってない。 でも、本というのは一般にニーズがあるから出版されるのであって、その本を作った版元のことがよくわからないのでは、出版物としての作品の本質に迫れないんじゃないかっていう風に考えたんですね。当時はそこまで言語化はできなかったんだけれど(苦笑)。で、誰もやらないなら私がやる!と思って。本当に生意気でした(一同:笑)。そしてそれを卒論のテーマにして、今に至るという。先輩に面白いよって勧学んだ古典が、結局は日本文学を専攻した原点になってるのかな、と思います。められた授業の中で非常に大きな疑問点を見つけて、それを解明するために、今も勉強し続けているっていう状態ですね。近世の、特に印刷出版されて世の中に広まった本を対象にして、ずっと調査研究を続けているというところです。 近世と一口に言っても260年以上続いた、近代に接続して現代に至る、非常に重要なポイントにもなる時代で、出版文化のあり方、出版文化の江戸時代における意義、また幕末から明治への変遷などは、現在は非常に盛んに調査研究されているテーマです。私としては、1600年代から1700年代半ばまでの、出版文化が発達し、版元が様々な作品を社会に送り出しながら活動の規模を拡大させていく時期に最も興味があります。 先ほども少し触れましたが、高校では、教科書に載っているテクストを、指導者である先生──ちなみになぜ近世文学、それも出版文化を専攻されたんですか?──近世において、出版文化の発展はとても大きな現象だったと思うのですけど、それがそこまで研究されていないっていう状態は今も変わらないのですか?──文学研究について、もう少し教えて下さい。江戸時代の出版文化大学での学び

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