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35 そうですね。でも、もっと大きな出会いもあったんですよ、高校のときに。トー ルキンの『指輪物語』が図書館の隅っこのところに眠っていたんです。赤い布製の本でね。それを手にとって……。 いや、1年生の間はまだ専門が決まりません。決めあぐねて先輩などに相談すると、「お前、もともとスペンサーの『妖精の女王』なんが大事だってことはよくわかります。それを教えてますから(笑)。  ……とはならず、最初は挫折しました(笑)。僕は高校のときは、物理部にも所属する理系志望だったんです。友達の一人がアメリカから取り寄せたボードゲームをやってたりして、そのうちRPGが僕らの間で流行しました。そこからですね。これって『指輪物語』の世界じゃんと気づいたわけです。一度は挫折した『指輪物語』の世界にどっぷりとはまり、最後は文系志望に変えてしまいました。 かに興味があったんじゃないのか。それならうち(慶應)には高宮利行先生がいるぞ」と教えられ、さっそく先生の研究室を訪ねました。  そのときに、もともと『赤毛のアン』に興味があったことなどを話しました。そうしたら、すでに先輩の一人が卒論で『赤毛のアン』を扱おうとしていると教えられ、「それならトールキンをやります」と言ったわけです。  そうなんですよ。信州大学の学生さんにもよく言ってることですが、1年生のときには、たとえ自分が勉強したい、これがやりたいと思っていることがあったとしても、いろいろなところに目を向けて、広い視野を確保することが大事ですね。そこから新しい扉が開かれるから、って。 ミュージシャンになるという夢があったものだから……。授業よりも音楽活動を優先している時間が長かったです。でも高宮先生の演習だけは欠かさず出ていました。厳しい演習でしたけど、多くのことを学びました。卒論では「神話と言語」というタイトルで、哲学者カッシー──では、『赤毛のアン』がきっかけだった、と。──はまっちゃった。──大学では、すぐに英語学への道を決められたんですか?──すごい行動力ですね。──専門を決めるって、偶然の要素もあるんですね。 ──大学時代は英語づけの毎日だったんですか?広い視野を確保することで 新しい扉が開かれる

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