仏教思想を学ぶことで,信仰の対象としての仏教から離れたところに,仏教の本当の面白さがあることが分かるようになるでしょう。研究を進めていけば,仏教は,心をめぐる精緻な分析をはじめとして,言語学や論理学,認知科学など,周辺の領域と密接につながっていることが見えてきます。〔著書〕Omniscience and Religious Authority: A Study of Prajñākaragupta’s Pramān4avārttikālan4kārabhās4ya ad Pramān4avārttika II 8-10 and 29-33. LIT Verlag, 2014; 『シリーズ大乗仏教9 認識論と論理学』(春秋社,2012) 〔「第7章 全知者証明・輪廻の論証」を分担執筆〕〔主要論文〕「仏教認識論とエナクティブ・アプローチ」『比較思想研究』第43号,2017;“Toward a Better Understanding of Ratnakīrti’s Ontology”, Sam4bhās4ā, Vol. 32, 2015; 「プラジュニャーカラグプタの〈知覚=存在〉説」『インド哲学仏教学研究』第22号,2015; “A Comparison between the Indian and Chinese Interpretations of the Antinomic Reason (Viruddhāvyabhicārin)” , Chen-kuo Lin & Michael Radich (eds.), A Distant Mirror, Hamburg University Press, 2014; “Ratnākaras´ānti’s Theory of Cognition with False Mental Images (*alīkākāravāda) and the Neither-One-Nor-Many Argument”, Journal of Indian Philosophy 42, 2014; “On the role of abhyupagama in Dharmakīrti’s scripturally based inference”, V. Eltchinger & H. Krasser (eds.), Scriptural authority, reason and action, Wien, 2013など。比較思想学会・理事日本印度学仏教学会・評議員仏教思想学会,東方学会・会員1994年,東京大学文学部(印度哲学専修)卒業,1997年,東京大学大学院人文社会系研究科(アジア文化研究専攻)修士課程修了(文学修士),2001年,東京大学大学院人文社会系研究科(アジア文化研究専攻)単位取得退学,2005年,ウィーン大学大学院文献学・文化学研究科博士課程修了(Dr. Phil.)5●現在の研究テーマ インド仏教を代表する思想家ダルマキールティ(7世紀)とその注釈者――特に未来原因説などの独創的理論で知られるプラジュニャーカラグプタ(8世紀)――の著作を中心に,「ブッダが全知者であることを全知者ではない人間がいかにして証明できるのか」「(インドにおける)神の存在証明の問題点はどこにあるのか」「肉体が滅んだとしても死後にまで続く心の連続体を証明することは可能だろうか」「三世を見通すヨーガ行者にとって,過去・現在・未来の区別はどのように設定されるべきなのか」などの問題をめぐってこれらの学僧たちが展開した思索を読み解き,その哲学的意義を検証しています。彼らの思想は中国や日本の仏教(漢訳仏典)には伝えられていません。そのため,サンスクリット語やチベット語で書かれたテキストの校訂作業が必須の作業になります。 それ以外にも,東アジア世界に伝えられた仏教論理学(因明学)の展開,あるいは,西洋の諸思想における知覚論とインド哲学における知覚論の比較,そして道元の時間論なども研究しています。仏教認識論,比較思想●教授 護山 真也
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