人文学部研究紹介2022-2023
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音楽それじたいはもちろん,音楽を取り巻く文化や人々をも研究射程に入れる音楽学。実践的なアプローチに加え,言語や歴史学など他領域との接続によって,ローカルにもグローバルにも対応できる「知識と自分の言葉」を養うことを目指しています。こうした基礎力と実践力を身に付けた卒業生たちは,民間から公務員まで幅広い業種で活躍しています。【著書】 「感性を『統合』する―― 国民音楽からトルコ民俗音楽へ」小笠原弘幸編『トルコ共和国 国民の創成とその変容』九州大学出版会,  2019 年, p p . 73- 96 . ―― トルコ民俗音楽の規範化への試みが、演奏実践上の変容と「地域様式」の確立への回路を形づくっていったことを論じたもの。 『トルコにおける「国民音楽」の成立』早稲田大学出版部, ( モノグラフ83 ) 2013 年。 ―― トルコ共和国建国期において, 「新しいトルコ音楽」創出をめぐって何が起こっていったのか。そのプロセスを言説, 制度, 音楽の   三つの視角から検証した博士論文をまとめたもの。【論文】 「ドイツにおけるトルコ系移民の音楽伝承にかかわる調査報告ードルトムントとベルリンを例に」信州大学人文科学論集6 , 2019年,  p p . 33 - 48 . 「近代西アジアの音楽とヨーロッパ音楽との交渉: トルコを中心に」( 共著, 編集) 他12名, 柘植元一、植村幸生監修,  国立情報学研究所 ディジタルシルクロード 音楽編, 2015 年。http://dsr.nii.ac.jp/music/ 東洋音楽学会(東日本支部委員),日本音楽学会,地中海学会,日本中東学会東京藝術大学音楽学部楽理科卒業,同大学大学院音楽研究科修士課程を経て,2008年,博士後期課程修了。博士(音楽学)。東京藝術大学教育研究助手,早稲田大学助教を経て,2014年より現職。9口頭で伝承されてきたトルコ民俗音楽は,共和国初期時代を中心に五線譜化され,トルコ国民音楽の源典となっていきました。2017年のゼミでは,御柱祭の木遣りの調査をおこないました。写真は諏訪大社下諏訪町木遣保存会の方々とゼミ生たち。●現在の研究テーマ1.音楽における東西交流史    主にトルコを中心とする音楽文化圏において,とくに19世紀から20世紀にかけて西洋化・近代化が音楽に及ぼした影響について,歴史的観点から研究しています。2.音楽の伝承とその過程    現代という時間軸において,音楽伝統がどのように伝承されていくのか,音楽をとりまく人,記憶,コミュニティなどをキーワードに検証しています。グローバルな観点からは,ドイツにおけるトルコ系移民の音楽の伝承について,ローカルな観点からは,信州,とくに松本の芸能と音楽(御柱祭の木遣りや神楽など)をめぐる伝承とその過程に関心を寄せています。音楽学●准教授 濱崎 友絵

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