農学部研究紹介(2022-2023)
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鈴木俊介准教授東京工業大学、東京医科歯科大学、メルボルン大学を経て、2012年に信州大学着任。専門は分子生物学、比較ゲノム学等を用いた哺乳類のゲノム機能の進化に関する研究。ゲノム編集技術を用いてヒトiPS細胞の遺伝子操作をおこなう研究テーマごとに班に分かれてチームワークで研究をすすめるキャプション生物化学研究室小西博昭教授2020年4月より現職前職は県立広島大学。大学院修了後、製薬会社に入りましたが、基礎研究をするために退社し、これまで様々な場所で機能未知タンパク質について生化学、細胞生物学的解析を行ってきました。ゲノム進化学研究室研究から広がる未来近年、生命科学研究における技術や情報がさらに充実し、ヒト疾患等にかかわる遺伝子の変異やタンパク質の異常に関して多数の報告がなされています。当研究室単独では、そのような大規模な研究を遂行することは困難ですが、これまで機能解析を続けてきたタンパク質とヒト疾患の関係についての報告も国内外から徐々に出始めています。近い将来には、当研究室の研究結果が疾患治療に役立つことが期待されます。卒業後の未来像一般的なDNA、タンパク質解析技術、培養細胞や遺伝子改変マウスの取り扱い技術などが修得可能。右のQRコードから活躍中の先輩の情報が見れます。研究から広がる未来鈴木研究室の研究は、人類がサルの仲間からどのように進化してきたかという、誰もが興味を抱く、地球史上非常に重要な問いの答えにつながっています。それと同時に、私たちのゲノムが抱えている、癌などのヒトに多い疾患のリスクを新たに明らかできる可能性を秘めています。進化的な観点から、なぜヒトがある病気になりやすいのかを理解する、こうした研究の積み重ねは、将来的に、病気の原因や分子機構をより深く理解し、対策につなげるために不可欠です。卒業後の未来像培養細胞を用いた遺伝子操作実験や遺伝子解析の基本が身につきます。自分自身の頭でアイデアを練り、計画を立てて実行することができる、どこに出ても活躍できる主体的な人材に育ってほしいです。ヒトの体内にあるのに、いまだに何をしているかわからないタンパク質の役割を知りたくないですか?機械の部品で同じような形をした「ネジ」1つも、長さ、太さ、ピッチ、材質、「+」「-」などそれぞれの特徴を持ち、使われる場所も異なります。タンパク質は生物の部品と言えますが、実験データがなくとも、計算上「ネジ」に形が似ているから、きっとこれも「ネジ」の役割を持つと予想することは可能です。しかし、ヒト体内のいつ、どこで、どのような働きをしているかわかっていないタンパク質はまだ残されています。当研究室ではヒトの細胞増殖に関与する可能性のある機能未知タンパク質の解析を行ってきました。タンパク質の多くは、その機能にちなんだ個々の名前がついていますが、我々が独自に命名して、解析を続けてきたタンパク質について、現在、動物個体での役割や病気との関連などを調べています。ヒトゲノムの約半分は、動く遺伝子あるいは可動性遺伝因子とも呼ばれる、レトロトランスポゾンとその残骸が占めています。ゲノムへのレトロトランスポゾンの新規挿入は、その周辺に存在する内在性遺伝子の発現調節を変化させることがあり、遺伝子の発現調節機構の進化を推進する可能性を秘めている一方で、遺伝子発現異常による疾患につながる例が知られています。鈴木研究室では、人類がチンパンジーとの共通祖先から分岐した後にヒトゲノム特異的に挿入したレトロトランスポゾンのもつ内在性遺伝子の発現調節機能の解析を通して、レトロトランスポゾンと人類の進化および疾患との関連性を明らかにすることを目指して研究を行っています。写真、図など生命機能科学コース生命機能科学コースヒトゲノムに秘められた人類進化の軌跡を読み解く4

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