農学部研究紹介(2022-2023)
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光合成による二酸化炭素固定(左)と、自然エネルギー発電によって生産された水素とバクテリアを利用した二酸化炭素固定(右)無菌操作用クリーンベンチ(左)、育種中の藻類(中)、各種分析機器(右)池田正人教授協和発酵工業(現、協和発酵バイオ)の研究者を経て、2004年より現職。研究分野は応用微生物学や代謝工学。竹野准教授と一緒に研究を行っています。伊原正喜准教授日本学術振興会特別研究員、理化学研究所、東京大学を経て2009年10月より信州大学農学部。蛋白質や酵素を自由自在に改造して、光合成生物の物質生産能力を高める技術開発に興味がある。コリネ菌はもともとビオチン要求性です。この菌に大腸菌と枯草菌の遺伝子を導入して、世界初の「ビオチンを要求しないコリネ菌」を開発しました。ビオチンを分泌するようになります(写真左)。コリネ菌に1つの遺伝子変異を導入するだけで、脂肪酸を分泌するようになることも見出しました(写真右)。ゲノム情報や代謝マップなど、生命のビックデータを活用し、最新のテクノロジーを駆使して研究を行っています。食品微生物工学研究室生物有機化学研究室研究から広がる未来これまで石油から作られていたものを微生物発酵法で生産する、そんな環境調和型のバイオプロセスが開発できれば、地球環境は美しいままでいられるでしょう。高価なものや希少なものを微生物バイオテクノロジーで効率的に作れるようになれば、より多くの人がそれを享受できるようになるでしょう。そんな未来づくりに少しでも貢献したい、それが池田・竹野研究室の原動力です。卒業後の未来像池田・竹野研究室では、研究力や専門性はもちろん、目的意識をしっかりと持って物事をやり遂げる姿勢を身につけることができます。大学院に進学してさらに研究を続ける学生が多いのが、この研究室の特徴です。多くの卒業生が、バイオや食品関連の会社で研究者や技術者として活躍しています。研究から広がる未来現在、化石資源の使い過ぎによって、我々の社会は様々な面で行き詰っています。しかし、これからの10年間は、石油依存からの脱却という非常に大きな転換期となります。従って、多くの化学物質は二酸化炭素から合成されることになり、そのための技術開発が求められています。一方で、生物は太陽光と二酸化炭素と水から様々な物質を巧みに合成し、環境を汚すことなく繁栄しています。私は、生物から多くの事を学び、みなさんと一緒にさらに改良して、新しい社会の基盤になる技術を開発したいと思っています。卒業後の未来像微生物の培養・育種、遺伝子や蛋白質の設計・調製、化学物質の分析実験を通して多様な実験手法が身につきます。また、研究室内では毎日のように活発な議論が交わされていますので、研究を進める力や問題解決力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。池田・竹野研究室では、代表的な産業微生物であるコリネ菌を題材に最新のゲノム科学を取り入れて、高性能な発酵微生物の創製を目指しています。主なターゲットは、有用脂質、そして脂肪酸経路から合成されるビタミン(ビオチン等)です。現在、世界のビオチンは全て石油から化学合成法で作られています。発酵生産には誰も成功していません。『オリジナルで斬新なアイデア』にこだわりを持って、世界に貢献する世界初のバイオ新技術の開発に取り組んでいます。私の夢は、微生物の力を借りて二酸化炭素から石油代替物質を生産することです。現在は、①休耕田などで藻類を培養し、光合成によって生産された糖質を回収し、バイオエタノールやバイオプラスチックに改質する、②自然エネルギー発電を使って生産された水素と排ガスなどに含まれる二酸化炭素とを混合し、バクテリアの力で様々な有用物質に作り変えるといったことを目指しています。そのために、藻類やバクテリアの探索や育種、遺伝子・蛋白質の改変を行っています。生命機能科学コース生命機能科学コース独自のアイデアで微生物の力で二酸化炭素から石油代替物質を作る!発酵研究の最前線を切り拓く1

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