農学部研究紹介(2022-2023)
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広葉樹材のめり込み性能を把握するための試験広葉樹材を利用した柱-貫接合部の試験北海道大学博物館産官学連携研究院等を経て2009年4月より信州大学農学部。人工林生態系の生物多様性創出、生態系サービスの制御、その地域活用を目的とした『人の関わる森林生態学』に関心がある。人工林でも間伐により生物多様性を高められる。このような人工林は、より充実した生態系サービスを発揮できるが、コストも高い。山地帯から樹木限界までの植物分布は、20年前よりも標高50m上方にシフトしていた。森林は地球温暖化のセンサーになっている。造林学研究室城田徹央助教木材利用学研究室末定拓時助教森林総合研究所を経て、2022年4月より現職。博士(農学)専門分野は木質材料学・木質構造学研究から広がる未来私たちは森林生態学の立場から、変動する地球環境のなかで、森林と人間との関わり方を考えるための研究を行っています。森林生態系を理解する研究や、森林生態系を制御する技術開発を通じて、循環型社会の創出に寄与できます。私たちがターゲットとしている中山間地域は小さな自治体ですが、それは科学的な研究成果を政策に反映させ易いアクティビティの高いフィールドともなっています。卒業後の未来像森林生態系をモニタリングする能力、樹木の種を同定する能力、樹木の生き方を理解する能力が身に付きます。これらの科学的能力は、公務員や環境コンサルタントの分野において森林計画の策定と実行に活用されます。研究から広がる未来人工林資源を持続的に利用するには「伐って、植えて、育てる」循環を適切に回すことが必要です。現在は充実した人工林資源を伐って使うことが課題となっています。木材の物理的・力学的特性を解明することができれば、木材をより自由に、効果的に建築物に使えるようになり、木材利用がさらに進むことで循環型社会の形成に貢献できると考えています。卒業後の未来像信州大学農学部の森林に囲まれた恵まれた立地による教育環境を活かし、森林から木材の利用までを俯瞰できるような人材を育成することを目指しています。造林学研究室では、森林の持つ諸機能を適切に発揮させ、生態系サービス(=自然の恵み)を享受することを目的に、樹木の挙動や森林の動態を、立地条件との関係から長期的に調べています。森林生態系は巨大なバイオマス、複雑な空間構造、多様な生物の相互作用によって特徴付けられる生態系です。その振る舞いを科学的な観点から観測し、地球温暖化の影響や、間伐等の施業の影響を抽出することで、森林生態系のグローバルな役割を長期にわたって維持させ、より良い人間社会の構築に寄与させることを、私たちは目指しています。木材利用学研究室(末定)では、木材を建築物の構造材料として利用するための研究を行っています。木材の炭素貯蔵効果を最大化するためには、木材をマテリアルとして長期的に利用することが望ましく、長期の利用が想定される建築物への利用は理にかなっているといえます。しかし、生物材料である木材は1本1本の性能にばらつきがあり、さらに樹種によってもその特性が大きく異なります。そこで、木材を建築構造材料として利用し、安全な建築物を設計できるように、木材の物理的・力学的特性の把握とその解明を目指しています。その上で木材の効果的な利用法を開発するための研究を進めています。森林・環境共生学コース森林・環境共生学コース木材の物理的・力学的特性を把握し、安全な建築物の設計につなげる『自然の恵み』を持続的に享受する~森林生態系と人間の営みの科学~31

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