農学部研究紹介(2022-2023)
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齋藤勝晴准教授博士研究員を経て2006年7月より信州大学農学部。植物微生物相互作用の植物栄養学的側面に関心があり、環境保全型農業への応用を目指している。根粒植物はバクテリアやカビなどと共生している最新の手法を駆使して植物微生物共生を研究している菌根キャベツの健全な根(左)と根瘤病に著しく感染した根(右). これが減収を招く.緑肥と化学肥料の組み合わせ施用下(左)と化学肥料のみの連作下(右)のキャベツの結球状態.上は5月下旬に播種、下は6月中旬に播種したもの. 緑肥を併用した方が結球状態は良好で根瘤病による被害が減少する.土壌生物学研究室高冷地生物生産管理学研究室鈴木香奈子助教国際農林水産業研究センター、国際熱帯農業研究所を経て2019年4月より信州大学農学部。サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の土壌肥沃度改善や作物収量向上に取り組んできたことを糧として、高冷地作物の栽培研究に取り組む。研究から広がる未来もともと別々に生活していた生物同士が、どのようにして共生を始めたのか?植物は微生物からどうやって養分をもらっているのか?私たちはそれらに答えるために、遺伝子や細胞、フィールドレベルで解析を進めています。このような基礎的な研究から、環境に配慮した生物生産を行うための共生の利用について考えています。卒業後の未来像土壌生物学の研究を通して、資料調査・課題抽出・計画立案・課題遂行・報告の一連を習得し、課題に取組む能力を向上させることが出来ます。卒業後は農業生産・指導、食品会社等で活躍出来る人材になります。研究から広がる未来高冷地地域における園芸作物は重要な換金作物であり、安全な作物を消費者へ持続的に届けることが重要です。しかし、根瘤病によって深刻な被害が生じています。病原菌を除去するために薬剤を用いた土壌消毒が採用されていますが、この使用頻度を減少させる環境保全型の栽培手法を確立できれば、より安全な食物を食卓へ届けることができるはずです。また、生産者にとってもコスト削減につながる有効な手法になると考えています。卒業後の未来像作物の栽培やそれを育む基盤の重要性について学ぶことを通して、農業の労働生産性の向上や食糧の安全保障の問題などについて取り組んでいける人材を育みたいと考えています。また、地元長野をはじめとする日本国内や海外の困窮している国々など、様々な地域における農業発展へ寄与できる人材を育みたいと思っています。化学肥料や農薬を使う量を減らし環境への負荷を低減することは現在の農業において重要な課題の一つです。私たちは植物と微生物との共生に注目し、生物の持つ能力を最大限に引き出すことで環境に配慮した生物生産に貢献することを目指しています。研究対象は、植物のリン酸吸収促進に関わる菌根共生(多くの植物種と菌類の共生)や生物窒素固定に関わる根粒共生(マメ科植物と細菌の共生)です。高冷地生物生産管理学研究室では、緑肥作物としてソルガム、ヘアリーベッチといったイネ科とマメ科の異なる作物を用いて、高冷地地域の代表的な園芸作物の一つであるキャベツの根瘤病の防止対策ならびに土壌の肥沃度、化学性、物理性、生物性の改善手法を見出していきたいと思っています。この研究の成果は、薬剤を用いた土壌消毒や外部からの多量な肥料投入を軽減させ、環境への負荷を減少させる栽培手法の構築に大きく寄与すると考えています。また、持続的に安全な食物を消費者へ届けるために取り組むべき重要な課題であると考えています。植物資源科学コース植物資源科学コース緑肥活用による高冷地野菜の環境保全型栽培手法の構築の可能性を追求する植物微生物間相互作用から環境保全型農業を探求する22

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