農学部研究紹介(2022-2023)
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COOHOH加藤新平准教授日本学術振興会特別研究員(DC1/PD)ならびに海外特別研究員を経て2008年11月より信州大学農学部。植物が病原体(糸状菌、細菌、ウイルス等)から身を守る機構を解明し、病気に強い植物を創ることが目標。(左)サリチル酸の構造。(右)普通の植物(A)は病気に勝つが、サリチル酸を合成できない植物(D)は病気に負けてしまう(PlantCell11:1393–1404,1999)サリチル酸生合成/機能の分子機構の解明に日々挑戦している農村振興に欠かせない農産物直売所や農産加工、農家民宿等も農業経営の一部。多くの女性たちが活躍している。現地の方々の勉強会等にも参加し、問題や情報を共有する。調査先では見て、聴いて、時には触れたり、嗅いだり、食したり…フィールドワークを通じ、現場の実態を自分の五感で確かめる。植物病理学研究室今日の農政では農業経営体の規模拡大を支援・推進する傾向が強まっています。しかし、中山間地域をはじめ、農業経営の規模拡大が困難な地域も多く存在します。例えば長野県の農家数は全国1位(2019年時点)。多数の小規模な農家によって、農業という一つの産業が支えられています。こうした現実を前に、多くの農山村では自治体や集落を単位とした地域全体で農業の問題を解決してきました。その一つが「集落営農」という形態です。農業経営学研究室では、こうした農村の現状を踏まえつつ、農業経済学や農村社会学の考え方を援用しながら、時代に見合った農業経営のかたちを模索し、農業経営体の育成について考えます。現場での調査、多くの方々との議論を通じ、農業・農村をはじめ社会の問題をより深く掘り下げ、実証的な分析を行います。農業経営学研究室小林みずき助教明治大学大学院農学研究科修了後、明治大学農学部助教を経て、2019年4月より現職。博士(農学)。専門分野は農業経済学、農村社会学。研究から広がる未来加藤新平研究室が研究対象としているサリチル酸は、植物の病気にも我々人間を含む動物の病気にも有効な生理活性物質です。研究室では、「植物が長い長い進化の過程で発明したこの生理活性物質を有効利用できれば、植物の病気あるいは動物の病気を防ぐ新たな方法を開発できるかもしれない」と考え、植物がサリチル酸を合成する分子機構やサリチル酸が植物の病気を防ぐ分子機構の解明に日々取り組んでいます。卒業後の未来像多くの学生は卒業後も大学院に進学し研究を続けています。大学院修了生は、学んだ専門知識を生かして、主に農園や食品会社で活躍中。研究室の方針が“自主性を重んじる”であるため、常に自分で考えて行動することが求められますが、その分卒業時には論理的に考え、自主的に行動する能力が備わります。研究から広がる未来農業経営学の対象は主に農業を行う経営体です。超高齢化社会を迎えた我が国の農山村では農業の課題は山積みです。しかしその一方で、多様な農業者や経営体が出現し、今までにない魅力的な農業を展開しています。本研究室では地域振興を目標としながら、農業経営体の育成を考えます。農業経営体のみならず、それらを取り巻く地域社会や食品・流通産業、消費者等、あらゆるものを研究の対象に取り込み、農業と農村の振興策を検討していきます。卒業後の未来像本研究室での主な研究方法はフィールドワークによる社会調査です。現場に身を置くことで、問題の所在と解決方法を考えます。調査先ではコミュニケーション能力も必須。現場での活動を通じ、実践力を養い、適応能力を高めることで、社会で活躍できる人材を目指します。サリチル酸加藤新平研究室では“サリチル酸”という化合物に注目して研究が行なわれています。皆さんはサリチル酸をご存知でしょうか?サリチル酸は代表的な解熱鎮痛薬であるアスピリンの有効成分です。それでは、サリチル酸はどこから来たのでしょう?サリチル酸は植物に含まれる薬理成分として発見されました。植物において、サリチル酸は病原体と戦う抵抗反応を誘導する重要なシグナル物質です。植物がサリチル酸を合成する機構が明らかになれば、病気に強い植物や次世代型の農薬、食べる解熱鎮痛薬の開発に応用できるかもしれません。植物資源科学コース植物資源科学コースサリチル酸は世界を救う!?~植物の病にもヒトの病にも効きます~農業・農村の実態から、地域振興を目指したこれからの農業経営を考える21

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