農学部研究紹介(2022-2023)
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Bどのような因子が卵胞の発育に関与しているのか?BB排卵卵子はどのようなメカニズムによって選ばれるのか?卵母細胞の多くは発育過程で退行する。私たちは卵巣の体外培養技術を用いて、卵母細胞と卵胞の発育機構のメカニズムの解明を目指す。A生後10日齢マウスの卵巣切片の染色像A:卵母細胞はそれぞれ1個の卵胞に存在し、卵母細胞は卵胞が発育するのに伴って発育する。B:Aの一部拡大像.卵巣にはたくさんの未発育な卵胞が存在する(破線で囲まれた部分)。より信州大学農学部勤務。神経系、内分泌系及び免疫系のクロストークについて、解剖組織学的手法を駆使して研究を行っている。平松浩二教授製薬会社勤務を経て、1991年諸白家奈子助教大学院博士課程を修了後米国や国内での博士研究員を経て、2017年より現職。研究分野は動物生殖学、発生工学。哺乳類の卵母細胞と卵胞の発育過程の解明、卵巣の体外培養技術の開発を行っている。ニワトリ小腸における基底顆粒細胞の透過型電子顕微鏡像.ニワトリ回腸の基底顆粒細胞におけるGLP-1(緑色蛍光)とニューロテンシン(赤色蛍光)の共存(黄色蛍光).(写真一枚or複数枚組み合わせ)動物生体機構学研究室消化管には無数の神経細胞と内分泌細胞が存在しています。消化管は、食物の消化・吸収を行うだけではなく、「第2の脳」でもあり最大の内分泌組織でもある訳です。また、粘膜付随リンパ組織を発達させたリンパ組織でもあります。消化管における神経-内分泌-免疫系のクロストークを解明できれば、「食べる」ことにより、血糖調節や粘膜免疫などの生体機能を制御することが可能になるかも知れません。また、新たな機能性食品の開発にも繋がる可能性を含んでいます。目標を定め、その目標にたどり着くための方法を選び、そこから得られた結果を考察し、ひとつの結論を導き出す。その結論から次の目標を定める。こうした理系の思考回路を身に付けられる様に指導しています。生殖細胞工学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来動物が生まれるために、卵母細胞の発育過程は雌動物で行われる最初の生殖活動です。しかし、体内現象であることからその解明は難しく工夫が必要です。そこで、生殖細胞工学研究室では、マウス卵巣組織等を体外で培養する体外モデルを用い、複雑な卵母細胞発育現象を体外で可視化し解析する技術の開発を行っています。卵母細胞の発育機構が解明されることで、卵巣内での卵胞発育を人為的に調節することが可能になります。将来は、産業動物のより効率的な繁殖方法の開発に繋がると考えられます。卒業後の未来像卒業研究等を通して、科学の本質を理解し、課題を論理的にそして自由に考えディスカッションする力を養うことで、将来の目指す道への土台作りができます。卒業後は大学院進学、各種メーカーでの研究・開発職、公務員等の様々な分野での活躍が期待されます。動物生体機構学研究室(Laboratoryof Animal Functional Anatomy: LAFA)は、動物解剖組織学の研究室です。「食べる」をキーワードに、様々な染色方法を駆使し、光学顕微鏡・走査型共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡などを武器に、ミクロの世界へ探索の旅に出かけています。その旅の中で得られた一枚の写真が世界を変えるかも知れないと信じながら。生物界のフォトジャーナリスト、それが我々解剖組織学者です。現在、消化管の内分泌細胞に焦点を当てて、研究を行っています。哺乳類の卵巣内では未発育な生殖細胞が袋状の構造をとる卵胞に一個ずつ囲まれて数万から数十万個存在します。しかし、そのうちの半数以上は卵胞の発育過程で死滅し、一生涯で成熟卵母細胞にまで発生し排卵される卵子の数は、発生・分化した全生殖細胞のうち1%未満です。実際に、どのような資質をもつ卵母細胞・卵胞が発育を開始するのか、また発育の過程で死滅する卵母細胞・卵胞はどのような特徴をもつのかは明らかになっていません。これらの現象を解明することで、産業動物の効率的な生産・増産、絶滅危惧種の保存、さらに生殖医療への応用を目指しています。50µm動物資源生命科学コース動物資源生命科学コース一枚の写真が世界を変える!?生物界のフォトジャーナリスト、それが解剖組織学者!!卵子はどのように発育し選ばれるのか?~効率的な動物生産を目指して~17

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