農学部研究紹介(2022-2023)
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++++B9Genistein (Gen)50 µm細胞抽出物Gen-bound resinGenInputPull downNMRによる構造解析(写真一枚or複数枚組み合わせ)活性無し活性あり50 µm真壁秀文教授日本学術振興会海外特別研究員(米国Purdue大学)を経て1999年6月より信州大学農学部。顕著な生物活性を持つ天然有機化合物の合成と活性、生命現象の解明を目的とした研究に関心がある。三谷塁一助教大阪府立大学で博士号を取得後、神戸大学で日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、2015年10月より信州大学農学部。専門は食品機能学、栄養生化学。食品成分による脂質代謝調節とNAD+の代謝制御に関心がある。プロシアニジンB3とプロデルフィニジンB3の前立腺癌細胞を用いた抗腫瘍活性試験B環にある1つの水酸基の存在が活性に重要である有機化合物の構造決定には核磁気共鳴スペクトル(NMR)が不可欠大豆イソフラボンのゲニステイン(Gen)(左図)は機能性食品成分として知られており、摂取することで脂肪組織の炎症反応を抑制する。Genの細胞内結合タンパク質を右図の様に培養細胞を用いて分子生物学的に探索する。矢印部分のバンドが結合タンパク質を示す。食品成分の生体での効果をマウスを用いて生化学的手法で解析する。対照群の脂肪組織(左図)と比較して、カカオ豆由来成分を摂取した群の脂肪組織(右図)では、脂肪細胞が小型化していることが分かる。天然物合成化学研究室食品機能学研究室研究から広がる未来私たちは有機合成化学の立場から、生命現象をたどり、優れた医薬品や機能性物質を作り出すための基礎研究を行い、人類の健康に寄与することを目指しています。研究の過程では新規反応の開発も行っており、有機化学の発展にも貢献することを心がけています。生命現象には様々な有機化合物が関わっています。本研究室では顕著な抗腫瘍活性を持つ天然有機化合物の合成を行ってきました。その化合物を用いて学内、学外の研究者と活性発現のメカニズムの研究を展開しており、癌を克服すべく研究に励んでいます。卒業後の未来像有機合成化学実験を通して有機化合物の取り扱い、性質、精製方法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。研究から広がる未来高齢社会である我が国では、医療費の増大が深刻な問題であり、疾病の予防・改善による健康寿命の亢進が課題となっています。肥満は、様々な生活習慣病(動脈硬化症、糖尿病など)のリスクファクターとして知られており、運動不足や食生活の偏りによって引き起こされることから、食品成分を利用した改善策が注目されています。私たちは培養細胞や動物を用いて、脂質の蓄積を抑制、脂肪組織の炎症を抑制する食品成分を探索します。そして、その作用機構を分子レベルで解明することで、将来的には肥満関連疾患を予防・治療する創薬の開発へと展開することを目指しています。卒業後の未来像培養細胞や小動物を使った実験を通して、食品の機能性解析や遺伝子導入技術などが身に付きます。また、大学院に進学した場合、論理的思考力や想像力といったスキルの向上もサポートします。将来は各分野で研究・開発職などで活躍できる人材を育てています。真壁研究室では、抗腫瘍、動脈硬化抑制活性など生活習慣病の予防や治療に関係する「顕著な生物活性を持つ生理活性物質」の合成や創製に取り組んでいます。有機化合物は人間が加工できる最も小さい精密な構造体です。有機合成化学の手法を用いて標的化合物を自在に合成する究極の物づくりを行っています。生理活性物質はごく微量で生物の行動や機能を制御しており、生命現象の鍵を握る存在です。私たちは生理活性物質の活性発現の仕組みや構造活性相関の解明、高度に機能化した分子プローブを創製することで生命現象を解明し、農薬・医薬への応用を目指しています。肥満や生活習慣病は本人だけでなく、子や孫にまで引き継がれることが明らかとなっていることから、次世代の健康を考える上で、青年、中高年で増加する肥満や脂質代謝異常を改善することは非常に重要な研究分野です。肥満や生活習慣病をはじめとする疾患では、内部環境因子(ホルモンなど)だけでなく外部環境因子(食品成分など)による影響が大きいことから、食品成分による疾病の予防、改善が広く研究されています。しかし、その分子機構には不明な点が多く残っています。食品機能学研究室では、上記の疾病に対する食品成分の機能と、その機能を発揮する際のトリガー(標的タンパク質)を同定することを研究しています。生命機能科学コース生命機能科学コース次世代の健康維持に向けた食品成分の探索と作用機構の解明を目指す有機合成化学の力で生命現象を探る

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