農学部研究紹介(2022-2023)
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1.きのこ遺伝資源の収集自動収穫機によって根が均一に切断されたホウレンソウ4.遺伝資源の評価と育種3.きのこ遺伝資源の保存2.組織分離培養5.優良系統の選抜50 μm福田正樹教授財団法人日本きのこセンター菌蕈研究所を経て、1991年1月より信州大学農学部に勤務。主な研究分野は、きのこ遺伝育種学。機能性分子解析学研究室藤田智之教授日本テルペン化学株式会社研究員、大阪府立大学農学部助手、大阪府立大学大学院生命環境科学研究科助教授を経て、2006年より現職。研究分野は食品化学、天然物有機化学。野外からのきのこ遺伝資源の収集、組織分離培養、遺伝資源の保存・評価・育種などの過程を経て、優良菌株を選抜しています4年生は各自の研究テーマに沿って実験を行います(左)実験の例:プロトプラストの作出(右上)、DNA多型解析(右下)加工した素材中の有用成分の組成や成分量の変化を解析します食品素材(穀類や果実)を100MPa程度の中高圧下で加工すると大気圧下では起こらない変化が現れます【玄米】【糠の成分を含む白米】中高圧加工処理精米応用きのこ学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像研究から広がる未来天然素材に含まれる有用成分を純粋に取り出して、その化学構造を明らかにする技術は、食品分野だけでなく、生薬の分析や生物間で作用する生理活性物質の探索研究にも活かすことができます。そのため他分野の研究者と共同で研究を進めることが少なくありません。研究室で発見した成分や新たに開発した技術などをシーズ(種子)として、有効性の高いテーマは企業と共同で商品化に向けての検討を進めています。卒業後の未来像藤田研究室では、食品中の有用成分に焦点を当てて研究を行っています。卒業生は食品企業だけでなく、香料や化成品などファインケミカルズと呼ばれる製品群を扱う業種の開発職として就職しています。きのこは抗腫瘍活性を示す物質や血圧降下物質など様々な生理活性物質を含んでおり、従来の嗜好性食物としてだけではなく薬理効果の高い機能性食物としても注目されています。福田研究室(応用きのこ学研究室)では、我々にとって有益なきのこを効率よく利用するために、生命科学の知見や技術を基盤にしてきのこ遺伝資源の評価やバイオテクノロジー技術を利用したきのこの育種技術の開発研究などを行っています。これらの研究はきのこ産業で求められているニュータイプきのこの開発や高機能性きのこの育種に繋がります。植物やキノコなど天然素材の中には各種疾病の発症予防や軽減化に寄与する未知の成分が含まれています。それらの素材の中から、新しい有用成分を探し出し、人の健康維持に役立つ新食品素材の開発を目指して研究を行っています。また、100メガパスカル(水深1万メートルの水圧に相当)程度の加圧が可能な高圧処理装置を用いて、食品素材の新しい加工方法を検討しています。玄米や籾に加水して高圧処理すると、糠(ヌカ)に含まれる機能性成分が胚乳に浸透移行します。この白米を食べると、玄米食と同様の健康効果が得られることを確認しています。長野県は食用きのこの生産量が日本一(全国生産量の約1/3)で、様々な種類の食用きのこが生産されています。このような背景からも、新たな特性を保有したユニークなきのこ品種を今後も開発していくことが重要です。現在の研究は、食用や機能性食品素材としてのきのこの価値を向上させるためのものですが、きのこの難分解性物質分解能力や発酵能力などに着目して育種を行えば、バイオリメディエーション(汚染物質分解による環境修復など)やバイオマス返還(きのこを利用したバイオエタノール生産など)にも応用できます。卒業生は、きのこ関連産業だけではなく、食品産業など本コースの一般的な就職先で活躍しています。研究室での活動を通して身に付けた考察力、問題解決能力、プレゼン力などが社会に出ても役立っているようです。大学院に進学して、研究を継続する人も多くいます。生命機能科学コース生命機能科学コースきのこの潜在能力を最大限に引き出し、「きのこスーパー系統」の開発をめざす健康に役立つ新食品素材の探究ー天然素材は可能性を秘めた宝物ー7

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