繊維学部研究紹介
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研究紹介研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科アグロバクテリウムは自分の持っている遺伝子を植物細胞に輸送して、植物染色体に組み込むことができる細菌です。つまり自然界で遺伝子工学を行っている細菌です。海外では除草剤耐性ダイズなどの遺伝子組み換え作物の栽培が一般化しています。これらの遺伝子組換え作物の多くはこの細菌を利用して作出されています。野川研究室では、実験操作を簡便化した植物への遺伝子導入法であるinplanta形質転換法の開発や、トランジェント発現による植物での有用物質の生産系の開発を行ってきました。現在、アグロバクテリウムを遺伝子工学的に改良することでもっとすごい能力、例えば葉緑体形質転換を可能にするアグロバクテリウムの開発を行っています。野川研究室では、生物関係の研究を経験してきていることから、食品会社や製薬会社への就職が多いですが、コンピュータ関係、化学関係など様々な会社に就職しています。また、公務員や教員として活躍している卒業生もいます。野川優洋准教授長岡技術科学大学助手、信州大学繊維学部助手等を経て、2009年より現職。研究分野は植物宇亜微生物の遺伝子工学や応用微生物学。アグロバクテリウムのDNAを植物の核へ輸送するタンパク質を葉緑体へ輸送するように改変た。青:核、緑:アグロバクテリウムのタンパク質遺伝子組換えはアグロバクテリウムの例を見ても分かるように、自然界でも起こっている現象です。これを応用することで、現在海外で栽培されている農薬を必要としない作物だけで無く、医薬品や工業原料も植物で作ることができるようになります。今は石油から作られているプラスチックなどの工業原料も遺伝子組換え植物を使用する事で、大気中の二酸化炭素と太陽の光を利用して作られるようになるでしょう。遺伝子工学する細菌アグロバクテリウムを利用する野生型タンパク質改変型タンパク質非形質転換体形質転換体遺伝子組換えでサイトカイニンの発現量を増やし、頂芽優勢の状態から枝分かれが促進したクワ。In planta形質転換法で作出した。教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科生体内には様々な機能分子が存在しており、これらの働きによって生物は生命活動を営んでいます。ゲノム解析によって多くの生体機能分子の詳細が明らかにされつつありますが、謎のベールに包まれたものも数多く残されており、有用な機能をもつものが眠っていると考えられます。野村研究室では、生体機能分子の代表と言える「タンパク質」について研究を行なっており、分子生物学的・遺伝子工学的技術を駆使して「酵素などの有用タンパク質の探索・改良」や「タンパク質生産技術の開発」に取り組んでいます。卒業生の多くは研究職に就いており、食品会社や製薬会社、素材・材料を取り扱う化学品メーカーなど様々な分野で活躍しています。他には、研究室での経験を生かして、DNA・遺伝子やタンパク質の分析を行なう仕事も考えられます。野村隆臣准教授ライオン株式会社研究開発本部、信州大学繊維学部教務員・助手・助教を経て、2017年より現職。主な研究分野は分子生物学・遺伝子工学的技術を用いた生体機能分子の解析。有用タンパク質の一つである酵素は、環境に優しい温和な条件で触媒反応することから、グリーンケミストリーの観点におけるキーテクノロジーの1つです。新規酵素の探索や遺伝子工学的改良は、食品・医療・化学合成など多くの分野への貢献が期待されます。また、生体内タンパク質合成の中核を担うリボソームや関連因子を分子レベルで改変することによって、従来の合成系では生産困難であった有用タンパク質の生産を可能にする技術開発に挑戦しています。生体分子の理解から応用〜未利用タンパク質資源の活用と生産技術の開発〜有用タンパク質を遺伝子工学的に改良することによって、従来よりも優れた機能(反応性や安定性の向上)を与えることに挑戦中。タンパク質の精製実験中。生体内に存在する膨大な数のタンパク質から目的タンパク質だけを取り出しているところです。51

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