繊維学部研究紹介
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教員紹介本邦は少子高齢化により、これまでの社会・経済システムが破綻を迎えようとしています。このような状況下、実は我が国のカップルの5組に1組が不妊症に悩んでいます。驚くべきは、その原因の半数が男性にある、ということです。これまで不妊治療は女性に重きを置いてきたこともあり、男性不妊がなぜ起こるのか、あまり研究がなされておらず、その原因は未だ不明です。今後、欧米中韓等先進諸国が日本に続き同様の状況に置かれることを考えると、『男性不妊』は重要であるにもかかわらず研究が進んでいない『BlueOcean』でもあります。高島研究室は、『精子幹細胞』『ヒト疾患モデル動物』を武器に、男性不妊に戦いを挑んでいます。信州上田の地で共に戦う仲間を待っています!今後人類が必ず直面するであろう『生殖能力低下』問題。実は原因が全くわかっていません。原因が分からなければ、診断も予防も治療もできません。高島研では現在、ヒトの男性不妊を模倣するモデル動物の開発を進めています。これが成功すれば、男性不妊の発症過程を観測することができます。観測できれば干渉できる。干渉できれば支配できる。つまり、この疾患の発症前診断・治療・予防が可能になります。高島誠司准教授学部〜博士課程までを東京工業大学で過ごし、その後東京大学医科学研究所研究員、京都大学医学部助教を経て現職。京都大で精子幹細胞研究を開始、この研究を発展させ、現在は男性不妊症の克服に挑む。精子幹細胞の能力。(左)試験管内で増殖するマウス精子幹細胞。(中)緑色蛍光タンパクを発現する精子幹細胞を移植した精巣。緑色蛍光を発する精子ができている。(右)精子幹細胞由来の精子でできた仔マウス。子供も緑色蛍光を発する(矢印)。研究から広がる未来卒業後の未来像当研究室で学ぶことで、『なんらかの資格が得られる』『就職先が保証される』というような都合のいいことは、残念ながらありません。しかし、世界的に重要でありながら、誰も解決できていない問題に取り組む経験は、今後の人生を歩むうえできっと活かされるはずです。先の見えない将来を案じるよりも、目の前にある重要でオモロイことに目を向けよう!応用生物科学科予防・治療法のない男性不妊と戦う男性不妊の発症原因。病原体への感染や遺伝子変異により発症する男性不妊はほとんど無い。多くの場合、『原因不明』である。この疾患はおそらく『環境要因』『体質(遺伝的要因)』の組み合わせで発症する多因子性の疾患だと考えられる。この病気の仕組みを知るには、2大要因を特定し、その作用メカニズムを明らかにする必要がある。50教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科根岸淳准教授東京医科歯科大学で博士号(学術)を取得、日本学術振興会特別研究員(PD)、株式会社ADEKA研究開発本部研究員、信州大学助教を経て現職。生体由来材料の開発、解析を目的としている。生物組織の特性を利用した新たな生体材料の開発生体組織から細胞を除去した脱細胞化組織は細胞外マトリックス(ECM)で構成され、組織特異的な機能を持つことが注目されています。当研究室は様々な組織から脱細胞化組織を作製・解析することでその要因や特性を明らかにし、組織再生へ応用することを目的としています。また、金属加工・食品加工分野で使用されている真空加圧含浸法(VPI)は、溶液などを材料へ効率よく導入する技術です。この技術を生体材料研究に応用し、細胞含有多孔質材料や新たな性質を有する複合化材料の開発にも取り組んでいます。脱細胞化組織の原料特異的な機能(神経突起伸長促進)真空加圧含浸(VPI)による多孔質材料への細胞導入脱細胞化組織は原料特異的な機能を有しており、生体内で組織再生や創傷治癒を促すことが期待できる材料と考えられています。幹細胞などと併用することで、複雑な生体組織や臓器を生体内外で作り出すことが可能になるかもしれません。また、生体材料開発に異分野の技術を応用することで、今までにない性質を持つ材料や技術の開発が可能になると考えています。研究を通して自ら考え行動すること、チームとして作業することを習得してほしいと考えています。研究室での経験を活かして、様々な分野で活躍してくれることを期待しています。

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