繊維学部研究紹介
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教員紹介堀江研究室では、植物が高塩濃度環境(塩ストレス)から身を守るための仕組みを、分子生物学、分子遺伝学、生理学的実験手法を取り入れながら紐解く研究を行っています。塩ストレスは、世界農業において農産物の収量を著しく減少させている頭の痛い問題です。気候変動に伴う土壌の塩類化が、世界の農地で近年激しく進んでいます。世界人口が増加を続ける傍ら、日本では耳慣れない“塩害”により、近未来の食糧生産が脅かされています。塩害地での農産物収量増産を可能とするために、イネを中心に耐塩性穀類を作出するための技術開発を目指しています。幸いにも私たちの暮らしは、年々より快適になって、食べ物に苦労する事もありません。しかし、一方で化石燃料の大量消費を基盤とした発展のツケが、今我々人間社会に重くのしかかってきています。植物基礎科学から得られた知識をうまく利用する技術があれば、近未来に危惧されている、食糧・エネルギー問題を回避するための、重要な一要素となるのではないかと考えています。これまで植物に関連する種苗会社や製紙会社、あるいは浄水器関連の会社、食品会社や教員と幅広い分野に学生が巣立っています。気候変動を実体験している世代として、自ずと環境問題への意識を持って会社や進路を選択する傾向も少なからずあるようです。堀江智明教授カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員、岡山大学資源植物科学研究所特別契約職員助教等を経て、2020年より現職。研究分野は、植物分子生理学、および植物分子・遺伝育種学。研究から広がる未来卒業後の未来像三大穀類の一つであるイネやモデル植物シロイヌナズナを材料にして、植物の耐塩性の分子メカニズムの解明を目指しています。植物の耐塩性に不可欠であるNa+輸送体に焦点をあて、その輸送活性や生理機能を追求し、将来的には輸送体分子の機能を改変する事で耐塩性植物作出に繋げたいと考えています。応用生物科学科将来の食糧生産の一助となる耐塩性作物を作ろう!教員紹介環境分析や毒性調査、環境浄化法の開発まで環境汚染に関わる幅広い分野を研究している森脇研究室。ポイ捨てゴミを分析したり、洞窟に環境浄化に役立つ微生物がいないか探検に行ったり、と様々な研究を展開しています。近年、力を入れているのが生物の作る材料を利用した環境浄化法の開発。廃棄物となる繭を油吸着剤として活用したり、バクテリアの作る高分子や羊毛のタンパク質成分を浄化剤に使ったりと新手法を次々と開発しています。こうした浄化法は環境に負荷を与えない安全な手法として、その発展と応用が期待されています。環境汚染による生態系や人類に対する影響は、世界的に見て、現在も深刻な状況にあり、その解決が非常に重要です。また、日本においても地震のため、重大な環境汚染が引き起こされました。環境汚染の実態を理解するとともにその浄化法を開発することは人類の未来のために不可欠であると考えます。現行の環境浄化手法にはまだ改善すべき点も多く、充分な対策がなされていない汚染地域も少なくありません。環境分析および浄化の研究を通じて、様々な環境問題に実際に役立つ成果を得たいと思っています。環境研究や対策の次世代のリーダーとなれる人材を育成すべく教育・研究を進めています。多くの学生が研究室での経験を生かして、公務員となったり、環境分析や検査を行う企業へ就職したりしています。卒業生は様々な場で環境マインドを持った社会人として活躍しています。森脇洋教授大阪市立環境科学研究所研究員、信州大学繊維学部准教授を経て、2015年より現職。研究分野は環境浄化法・環境分析法の開発や環境モニタリングといった環境化学ならびに分析化学。世界では安全な水にアクセスできず、感染症にかかる子供が多数います。水の浄化は非常に大きな研究テーマであると考えています大阪城の堀の泥を分析し、350年間の大気環境の歴史を再現しました。戦争の空襲が環境に最も悪影響を与えていたことが分かりました研究から広がる未来卒業後の未来像水質汚濁 世界的に重大な問題新しい浄化法生物資源の利用・安全かつ環境にフレンドリー・低コスト・廃棄物利用注)写真はイメージ図です。 安全な水を作る!・羊毛・くず繭・バイオポリマー水質汚濁 世界的に重大な問題新しい浄化法生物資源の利用・安全かつ環境にフレンドリー・低コスト・廃棄物利用注)写真はイメージ図です。 安全な水を作る!・羊毛・くず繭・バイオポリマー応用生物科学科生物の作る材料を利用した環境浄化法を開発する!48

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