繊維学部研究紹介
45/63

教員紹介梶浦研究室では、カイコとその近縁種ヤママユガ(天蚕)の遺伝育種、脱皮変態、卵形成、系統関係を研究しています。遺伝育種の研究には、亜種と多数の産地別の系統が必要なので、それらを保存しています。このような努力が認められ、天蚕は高度なライフサイエンスの研究資源としてナショナルバイオリソースプロジェクト(文部科学省)に選ばれています。実際、天蚕の優良系統を育成し、天蚕糸産地の天蚕飼育を支援しています。わが国のシルク産業の再活性化につなげようと思います。梶浦研究室では、カイコや天蚕の新品種と新飼育技術を開発し、生糸・天蚕糸産地の活性化と日本のシルク産業の復興を目指しています。飼育に情報通信システムと太陽発電などを取り入れ、次世代の飼育体系とネットワークを構築します。研究から広がる未来は、家蚕生糸・天蚕糸産地の後継者育成、農商工連携事業の人材育成に協力し、シルク産業やさらに他の農作物の生産が活発に営まれるような未来です。大学院進学、繊維会社、食品会社、JA、地元企業、農学系公務員などで活躍しています。梶浦善太教授学位:農学専門分野:農学・応用昆虫、分子遺伝学、育種学キーワード:遺伝、育種、卵形成、バイオリソース天蚕の繭と糸天蚕の繭はきれいな緑色になる。天蚕の仲間は世界中に分布しているがこの色の繭は日本のものだけである。天蚕糸は貴重で高価なものである。研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科蚕・野蚕の遺伝資源を活用し、国産糸のブランド化に利用します大型天蚕系統の育成に成功した。上段は普通天蚕系統、下段は大型天蚕系統である。取れる糸量は増加し、1kgの天蚕糸を得るために、普通天蚕系統で3,000個以上の繭を必要としたが、大型天蚕系統はおよそ2000個の繭があればよい。44教員紹介カイコや野外の昆虫の休眠現象や季節適応を研究している塩見研究室。昆虫は温度、日長または湿度やエサなどの状態をセンサータンパク質が受け取り、訪れる季節を予知し、からだのしくみを巧みに作り変えて環境に適応しています。このしくみを明らかにし、遺伝子組み換えカイコの効率的な長期保存法や自然やヒトに無害な害虫防除法の開発を目指しています。カイコの休眠時期のコントロールは、「昆虫工場」として、利用が進む遺伝子組み換えカイコの効率的な作出に貢献しています。このことを応用すれば、害虫駆除だけでなく生態系の保護にも役立ちます。ここ数年、ミツバチの個体数が全世界で減少し続けていますが、このような希少昆虫を卵の段階で保存し、将来の安定供給につなげることも可能なのです。また、昆虫の生態には未だに謎の部分も多く、それらを解明することで地球規模の環境問題や食糧問題、医療問題などに役立つ結果が得られると考えられています。食品会社や製薬会社、自然を相手にするような環境系企業等に就職する学生もいます。また研究室での経験を生かして、遺伝子解析などを行う企業にも卒業生を輩出。他にも、貿易関連の検査に携わるといった将来も考えられます。塩見邦博教授信州大学繊維学部助手を経て、2021年より現職。研究分野はカイコや昆虫の休眠や変態、季節的多型といった蚕糸昆虫学、環境分子昆虫学、応用昆虫学。研究から広がる未来卒業後の未来像カイコのセンサー遺伝子を導入した培養細胞を観察するカイコのもつ有用な遺伝子のクローニング応用生物科学科カイコの休眠や昆虫の季節適応のしくみを解き明かす!カイコの卵のようす。左は休眠に入っていない卵。産卵1週間後で幼虫体ができあがっている。右は休眠卵。産卵後1ヶ月が過ぎても発生がほとんど進んでいない。

元のページ  ../index.html#45

このブックを見る