繊維学部研究紹介
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教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科マイクロ波を利用した化学マイクロ波を使った新規材料の創成と物性の解明を目指しています。「電波」と言えば地上波のラジオやテレビ、衛星放送、携帯電話、無線LANなど通信用途が主な用途として思い浮かぶと思います。しかし今や、どの家庭にも最低1台はある「電子レンジ」も同じような「電波」を使っていますが、こちらは通信用ではなくて「調理」のための道具です。調理は化学プロセスとしても位置付けることができますので、そこからさらに一歩進めて「化学および化学反応・化学プロセスのための利用法」を模索しています。どのような分野であっても解決すべき課題に向かってプロセス(ものごとの進め方)やシステム(課題の具体的解決法)を積極的に提案できる人になれるはずです。写真説明研究の発端は何でも構いません。何かやってみたいこと、疑問に思うことがあったらまず、その解決策を「自分で考える」ことが大切です。このことが研究を推進する力になります。学生さんには研究室をトレーニングの場としてとらえていただき、ここで考える力を養うことによって将来必要とされる世の中のどんな要求にも的確に応えられるようになるでしょう。上の写真にある研究用マイクロ波発振器を使って無機物質(ここでは炭素を主体とする材料)にマイクロ波を照射すると800℃以上のコンパクトな高温雰囲気場を作り出すことができる。ここにメタンを接触させることで水素への効率的な転化をすることが可能になる。滝沢辰洋助教信州大学繊維学部機能高分子学科卒業。信州大学繊維学部教務員、助手を経て現職。興味のある分野は材料物性全般。42教員紹介研究から広がる未来卒業後の未来像化学・材料学科特殊な合金の特殊な触媒機能を解明・開発金属などの固体触媒は、目的の化学反応を起こしやすい「場」を表面に提供します。化学反応は原子・分子の間で電子をやり取りして進行します。なので、触媒の性能は、触媒物質が持つ電子がどういう状態なのか、触媒表面はどういう状態なのか、によって左右されます。違う金属を混ぜ合わせると電子の状態も表面の状態も変わりますので触媒機能が変わります。中でも、異種金属が整数比で混合し規則的に配列した「金属間化合物」という特殊な合金では特殊な触媒機能が発現します。当研究室では、明確なターゲットは決めずに、多種多様な合金の触媒機能を精密に調べて共通の法則性を解明することにより、あらゆる触媒に使える開発設計指針を獲得しようと考えています。表面元素制御 電子状態制御 EFEnergyDOSEnergyDOS元素置換 XYZHHeLiBeBCNOFNeNaMgAlSiPSClArKCaScTiVCrMnFeCoNiCuZnGaGeAsSeBrKrRbSrYZrNbMoTcRuRhPdAgCdInSnSbTeIXeCsBaLaHfTaWReOsIrPtAuHgTlPbBiPoAtRnXYZX2YZ吸着表面反応脱離触媒分子触媒反応の模式図(左)、ホイスラー合金触媒(右)(Sci. Adv. 4eaat6063, 2018:CC BY-NCライセンス: http://creativecommons.org/licenses/by-nc/4.0)金属溶解炉(左)、単結晶薄膜合成装置(右上)、非酸化雰囲気操作装置(右下)試料の合成、取り扱い、触媒評価の全てを精密に行い、メカニズムを解明!従来の触媒研究は殆ど化学者によってのみ行われていましたが、特殊な合金の取り扱いには金属(冶金)学の知識や技術が必要なため、その触媒機能は殆ど未解明です。特に元素数が3元以上になるとさらに複雑になる一方、元素の組み合わせが無限に広がり、特殊な触媒機能の発現が期待できます。そのような系を開拓していけば、従来の常識を覆す触媒機能が発見されると考えています。革新的触媒の開発は、新化合物や新素材の合成、化学反応を伴う様々なプロセスの省エネルギー化・環境負荷低減につながります。これからは終身雇用の時代も終わり、一握りの超有能な人間以外、一つのことだけを突き詰めて生きていくのは難しくなります。分野や既成概念にとらわれずに常に広い視野を持っておくことが重要です。ポストコロナの激動の時代を生き抜くため、柔軟な思考と行動力を身に付けてほしいと思っています。小嶋隆幸助教東北大学工学研究科で博士(工学)取得後、同大学研究員、助教を経て、2020年11月より現職。学生時代は(金属)材料を専攻、磁性材料薄膜を研究し、分野を変えて触媒の世界へ。異分野融合を常に模索。

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